出所:共同通信イメージズ

 日本企業の収益性はなぜ低いのか? その理由を解明するヒントとなるのは、早稲田大学大学院商学研究科教授の井上達彦氏が研究する「ビジネスモデル」だ。収益性の本質を考える上で、事業の成り立ちをどう整理すればよいのか。ROSとROAを高めるビジネスモデルとはどんなものか。Japan Innovation Review主催のセミナーに登壇した井上氏の講演を基に、企業が収益性を高めるための現実的な解決策を探る。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「経営企画イノベーションフォーラム」における「特別講演:ROSとROAを高めるビジネスモデル構築/早稲田大学大学院商学研究科教授 井上達彦氏」(2026年2月に配信)を基に制作しています。

ビジネスモデルを図解化して捉え直す

 井上氏はこれまで多くの機関投資家やファンドマネージャーらとの対話を繰り返してきた。その過程で、企業のビジネスモデルに注目するようになったという。「プロの投資家が財務データを見る際、まずその企業のビジネスモデルを分析する。PL(損益計算書)やBS(貸借対照表)を見るのはその後だ」と話す。ビジネスモデルを見なければ、その企業の本質は分からないということだ。

 例えると、ビジネスモデルは木の根に相当する。根から吸い上げられた養分が、枝葉として表れるのが売上げや利益だ。高収益で、一見、枝葉が茂っているように見えても、根が細ければ持続的な成長は見込めない。逆に、現状は利益が出ていなくても、強固な根を持っていれば将来の成長が期待できると考えられる。

 当然、経営においてもこの視点は重要だといえる。だが、ビジネスモデルを的確に理解するのは意外と難しい。一般には、有価証券報告書などに事業系統図が掲載されているが、様式が統一されていないなど、分かりやすいとはいえないのが実情だ。

 そこで井上氏が提唱するのが、ビジネスモデルの図解化だ。企業と顧客の立ち位置や製品、サービス、キャッシュの流れなどを一定のルールで可視化し、その事業がどのように成り立っているかを一目で分かるようにした。

 そもそもビジネスモデルとは何か。定義が多様ではあるが、井上氏は「多くのビジネスパーソンは、マネタイズの方法と混同しがち」と、根本的な認識の違いを指摘する。

 どういうことかというと、仮にワンショットのビジネスがあるとする。そのビジネスを手掛ける企業が、ある日突然「明日から継続課金にします」と打ち出したら、顧客が付いてくるはずがない。継続課金に値する商品やサービスを提供して、初めてビジネスとして成立するはずだ。

 継続課金の例では、米国動画配信大手のネットフリックスが分かりやすい。豊富なタイトルやランキング、続きが気になるオリジナル作品といった価値が継続することで、継続課金が成り立っている。

 つまり、井上氏が考えるビジネスモデルの定義は「どのように価値を創造し、顧客に届け、自らも収益として獲得するかを論理的に記述したもの」ということになる。価値の「創造」と「獲得」の2つの軸があってこそ優れたモデルといえる。