出所:共同通信イメージズ出所:共同通信イメージズ

 日経平均株価は2025年に史上最高値を更新後、2026年も高値圏で推移している。こうした日本株について「令和のバブルではないか」と指摘する声が聞かれる一方で、「私が肌で感じてきたバブルの実像とは異なる」と評するのは、2025年10月に著書『山一前後 日本証券市場の敗戦と復興』(日本経済新聞出版)を出版した日本経済新聞編集委員の小平龍四郎氏だ。同氏が分析する1980年代のバブル期と現在の違い、バブル期に加速した会計の国際化とその裏側で起こった「ある出来事」について聞いた。

山一證券の破綻が示した「日本経済のどん底」

──著書『山一前後』では、日本証券市場の敗戦と復興の経緯を「山一證券の破綻」を通して描いています。なぜ、このテーマを選んだのでしょうか。

小平龍四郎氏(以下敬称略) 本書を執筆するきっかけとなったのは、2024年2月に日経平均株価がバブル期後の最高値を更新したことです。その少し前から「日経平均が1989年12月のバブル期最高値である3万8915円を超えるのでは」との期待が高まり、国内外の市場関係者から「日本企業は変わった」という声が多く聞かれるようになりました。

 ちょうどその時期に、若い投資家や証券会社の新人、大学生などと話をする機会がありました。彼らの多くが、バブル期に対して「一度は体験してみたい」といった、どこかポジティブな印象を持っていることに驚かされました。私自身が現場で取材し、体感してきたバブルの実像とは大きなギャップがあったのです。

 その一方で、株価が上昇したり景気が上向いたりすると、すぐに「これはバブルではないか」と身構える傾向があります。しかし当時のバブルには、きらびやかな側面だけでなく、「デタラメさ」や「規律の緩み」「モラルの崩壊」といった深刻な問題が内在していました。それが日本版金融危機を招いたのです。

 だからこそ、あの時代に証券会社がどのような行動をとり、マーケットがどのような異様な空気に包まれていたのか、負の側面も含めて当時のリアルな姿を知ってもらいたいと思いました。それを知らずして、今の日本経済の現在地を正確に捉えることはできないと感じたのです。

 1997年に起きた山一證券の破綻は、日本経済のどん底を象徴する出来事でした。同時に、それは日本経済が新たな段階へと進むための「改革の出発点」でもありました。だからこそ、本書では「山一前」の旧体制と、「山一後」の新たな体制を対比する構成とし、現在の日本経済がどこに立っているのかを読者に伝えたいと考えました。