出所:共同通信イメージズ出所:共同通信イメージズ

 2026年に入り、日経平均株価は高値を維持し続けている。けん引役のひとつが世界的なAIブームだ。急騰する株価はバブルの再来を意味するのだろうか――。熱を帯びる株式市場について「過去の歴史を見れば、まだバブルの段階ではない」と語るのは、2025年10月に著書『山一前後 日本証券市場の敗戦と復興』(日本経済新聞出版)を出版した日本経済新聞編集委員の小平龍四郎氏だ。1990年代のバブル崩壊と証券市場の教訓から現代の投資家や経営者が学ぶべき視点とは何か、同氏に聞いた。

山一證券という「反面教師」の意味

──著書『山一前後』では、2000年代に日本で「コーポレートガバナンス改革」が急速に進んだ背景として、「山一證券を“反面教師”とする心理があった」と述べています。具体的には、山一證券のどのような点が反面教師となったのでしょうか。

小平龍四郎氏(以下敬称略) 山一證券の破綻が遺した最大の教訓は、いわば「お友達ガバナンス」ともいえる、極端なまでの組織の「同質性」だったと思います。この同質性が、内部の健全な批判を封じ込め、隠蔽(いんぺい)体質の温床になっていたのです。

 実際、1997年6月の株主総会を経た山一證券には、取締役が40人も在籍していました。今の常識では多すぎますが、当時は一般的。別の大手銀行などは、取締役の人数が多すぎて、会議室には椅子が足りず、壁際にパイプ椅子を並べて座るという、笑えないエピソードすらあったほどです。

 取締役の構成にも偏りが見られました。ほぼ全員が男性の生え抜き社員で、年功序列による順送り人事で選ばれた人ばかりだったのです。会長や社長に気に入られた人が出世して取締役に加わるという、論功行賞的な人事が横行していました。

 当時の日本企業では、こうした取締役会は決して例外ではありませんでしたが、このような組織では経営に活力が生まれず、自浄作用も期待できません。不正会計が行われていても、異議を唱えることなどできなかったのでしょう。

 だからこそ、この異常な状態にメスを入れ、その対極を目指そうとしたのが、日本におけるコーポレートガバナンス改革だったのだと思います。