ふくおかフィナンシャルグループ 取締役社長の五島久氏(撮影:榊水麗)

 TSMCの進出に伴い、半導体産業の急速な成長が期待される九州。その経済効果については、「10年間で23兆円」という試算も出ている。こうした半導体の盛り上がりの中にあって、「新生シリコンアイランド九州()」と呼ばれるエコシステム構築に取り組んでいるのが、地方銀行グループのふくおかフィナンシャルグループ(FG)だ。人手不足を見越したインドネシア人材の還流スキーム構築、メガバンクとの連携など、半導体の一大集積地になるべく次々と施策を打っている。ふくおかFG社長の五島久氏に、新生シリコンアイランド九州の実現に向けた戦略の全貌を聞いた。

※TSMCの熊本進出などを機に、かつて世界シェアの1割を誇った九州の半導体産業を、単なる製造拠点から研究・開発・人材育成を含む「世界的な先端半導体の集積地」として再興・進化させる産官学連携の長期プロジェクト。

「九州全体の経済構造」を変え得るインパクト

──ふくおかFGを取り巻く直近の事業環境について、どのように見ていますか。

五島久氏(以下敬称略) 金融ビジネスと地域経済の両面で、かつてないほど大きな変化の波が押し寄せています。

 まず金融ビジネスの側面では、日本銀行の政策変更により「金利のある世界」が戻ってきました。これまで長期にわたるマイナス金利下で当社も苦心してきましたが、預金という安定的な調達基盤を持つ地域金融機関にとって、正当な金利収入が得られる環境は収益成長の大きな追い風となります。

 一方、地域経済の側面では、世界最大の半導体受託製造企業であるTSMC(台湾積体電路製造)の熊本進出が決定的な転換点となりました。九州のGRP(域内総生産)は約54兆円規模ですが、TSMC進出に伴う経済波及効果は今後10年間で約23兆円に達すると試算されています。これは九州全体の経済構造を変え得るほどのインパクトです。

──すでに2024年12月には、TSMCの第1工場が稼働を開始しています。九州には今、具体的にどのような変化が起きていますか。

五島 工場建設に伴うインフラ整備、道路、住宅建設といったハード面の需要はもちろんですが、加えて国内外のさまざまな企業がサプライヤーとして九州に進出しています。まさに「ヒト・モノ・カネ」がグローバル規模で動き始めているのを実感しています。

 これらは熊本を中心とした動きではあるものの、九州は車や公共交通機関で2時間もあれば主要都市や産業拠点がつながるコンパクトな経済圏です。その意味で、波及効果は熊本一県にとどまらず、九州全体に広がっています。

 私たちへの資金ニーズとしては、足元では工場建設や関連インフラへのファイナンスが確実に増えています。しかし、これはまだ序章にすぎません。重要なのは、TSMCの進出を契機に、周囲にどのような「エコシステム」を構築できるかです。