落語に登場する与太郎は、周囲の常識を揺さぶる(写真提供:共同)

「取締役会に詩人を入れよ」。アメリカの作家ダニエル・ピンクが紹介したこの言葉は、効率と論理を追求する現代経営において狂気に聞こえるかもしれない。だが、ドラッカーが「マネジメントはリベラルアーツである」と語ったように、人間の矛盾を扱う「知」こそが経営の本質だ。

 AIが論理の天才なら、人間に求められるのは常識を破る「愚者」の感性だ。落語の与太郎のように本質的な問いを投げかけ、ゼロから1を生み出す力が、今求められている──。

組織には「異物」を

「取締役会に詩人を入れよ」──。アメリカの作家ダニエル・ピンクの著書『ハイ・コンセプト』(三笠書房)で紹介された一文だ。効率、論理、エビデンスを追求してやまぬ現代経営において、この言葉は狂気の沙汰に聞こえるかもしれない。

 金勘定から最も遠いところに位置する人種が、経営の何に役立つのか。だが、この提言の裏には、「経営とは何か」という問いへの深い洞察が隠されている。経営とは突き詰めれば「人間の営み」だ。そして人間とは、論理のみで割り切れない矛盾に満ち満ちている。嫉妬、情熱、意気消沈、そして気まぐれ──。ビジネスの現場にいる人なら、嫌というほど目にしてきたはず。こうした人間の生の姿はデータに表れようがない。

 だからこそ、ドラッカーはマネジメントをこう定義した。「マネジメントとは、リベラルアーツ(教養)である」