写真提供:©David Becker/ZUMA Press Wire/ゲッティ/共同通信イメージズ

 組織の意欲向上や目標達成のため、多くの企業が導入している報酬制度。一方で、運用を誤ると、従業員の行動を思わぬ方向に導いてしまうこともある。行動経済学の第一人者による『インセンティブが人を動かす』(ウリ・ニーズィー著/児島修訳/河出書房新社)から内容の一部を抜粋し、効果的なインセンティブ設計のポイントを考察する。

 全米屈指のレンタルビデオチェーンだったブロックバスターが、新興のネットフリックスに敗れた背景には何があったのか。

ネットフリックス躍進の背景

インセンティブが人を動かす』(河出書房新社)

 考え方が保守的すぎたために、転落した巨大企業は多い。たとえば、ブロックバスター社が業界トップの座から転落して倒産に至ったケースは、変化を避け、失敗を恐れる企業がいかに停滞を招き、最終的には市場から淘汰(とうた)されてしまいかねないかをよく物語っている。

 1985年にデビッド・クックによって設立されたブロックバスターは、すぐにアメリカでナンバーワンのレンタルビデオ・チェーンとなり、市場を席捲(せっけん)した*8。90年代後半に入ると、同社の市場価値は30億ドルに達し、アメリカ国内に9000軒以上の店舗を有するまでになった。

 レンタル料金に加えて、DVDの返却が遅れた顧客から徴収する延滞料金も、このレンタルビデオ市場の王者の大きな収益源だった。最盛期には、6500万人という膨大な会員から年間8億ドルもの延滞料金を徴収していた*9。延滞料金はかなりの額になる場合もあり、当然ながら、そのことに不満を持つ顧客も多かった。後にネットフリックスの創業者になるリード・ヘイスティングスも、こうした不満を持つ顧客の一人だった。

8. Ben Unglesbee, “A Timeline of Blockbuster’s Ride from Megahit to Flop,” Retail Dive, October 7, 2019, https://www.retaildive.com/news/a-timeline-of-blockbusters-ride-from-megahit-to-flop/564305/.
9. Andy Ash, “The Rise and Fall of Blockbuster and How It’s Surviving with Just One Store Left,” Business Insider, August 12, 2020, https://www.businessinsider.com/the-rise-and-fall-of-blockbuster-video-streaming-2020-1.