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 上位2割のリピーターが売り上げの8割を占有――この「定説」がマーケティング戦略を誤らせる。ブランドの持続的成長には、ロイヤル顧客の育成だけでなく、無関心層や浮動層の獲得が欠かせない。『“未”顧客戦略』(村山幹朗、芹澤連著/日経BP)から一部を抜粋。未顧客市場の攻略に不可欠な視点や思考を解説する。

 広告を増やすほど、競合は消費者の頭から消えていくのか。認知科学の観点から、マーケターが押さえておくべき「想起」と「選択」の関係をひもとく。

「考慮集合に含まれる確率」と「考慮集合から取り出される確率」

“未”顧客戦略』(日経BP)

 まず、需要が発生してからブランドが選ばれるまでに、消費者の頭の中で起こっていることの全体像を理解しておきましょう。

 消費者は棚に並ぶ全ての商品を見比べてくれるわけでも、ECサイトの商品ページを隅から隅まで読んでくれるわけでもありません。ブランド選択というのは常に不完全情報の中で行われるゲームなのです。このことを説明するために、消費者行動研究で広く受け入れられている「二段階モデル」に当てはめて解説を続けます。

 二段階モデルというのは、消費者はまず市場に存在する多数のブランドを単純なヒューリスティックスによって絞り込み(例:価格、セイリエンス)、その中から最終的に購入する商品を選ぶと仮定した購買行動モデルで、マーケティングサイエンスの研究でもよく使われています(Brady & Rehbeck, 2016; Bronnenberg & Vanhonacker, 1996; Gallego & Li, 2024; Manzini & Mariotti, 2014; Van Nierop et al., 2010)。平たく言えば、ブランド選択プロセスを「考慮集合に入るまでの想起段階」「考慮集合から取り出される選択段階」の2つに分けて考えてみようということです。

 前者は「ある生活文脈で需要が発生した時にブランドが想起されるか」というメンタルアベイラビリティの話、後者は「その中でどれくらい選ばれやすいか」というフィジカルアベイラビリティの話だと思ってください(既存顧客の場合は相対的なプレファレンスの話)