金相場はついに3000ドルの大台を突破した(写真:CFoto/アフロ)金相場はついに3000ドルの大台を突破した(写真:CFoto/アフロ)

 ついに1トロイオンス当たり3000ドルの大台を超えた金価格。その理由として「ドル離れ」を指摘する声も挙がるが、金はドルの代替手段となりうるのだろうか。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 金価格が急騰している。

 3月14日のニューヨークの相場では、終値でついに1トロイオンス当たり3000ドルを超えた。2023年まで2000ドル程度だったことを考えると、この1年2カ月の間に切り上がった水準は30%を超える(図表1)。2000年頃の金価格は300ドルを下回っており、四半世紀の間で実に10倍も上昇した計算だ。

【図表1 金相場とドル相場の関係】

(出所)ロンドン貴金属市場協会、ダラス連銀(出所)ロンドン貴金属市場協会、ダラス連銀

 従来、金相場とドル相場は逆相関の関係にあることで知られていた。つまりドル高であれば金安となり、ドル安となれば金高となる関係である。

 金価格はドル建てのため、買い手からみれば、ドル高であれば割高となり、ドル安となれば割安となる。したがって、ドル高であれば金安となり、ドル安となれば金安となる関係が、相場では長らく続いてきた。

 ところが、2023年を過ぎたあたりからその関係は逆転しており、ドル高と金高はむしろ順相関となっている。

 ウクライナ情勢や中東情勢を受けて、安全資産としての金の需要が強まったためだと考えられるが、ドル高と金高の順相関がいつまで続くか定かではない。金は貴金属だが商品でもあるため、割高と判断されれば暴落する。

 こうした金価格の上昇を、いわゆる「ドル離れ」の観点から説明しようとする向きもある。

 ウクライナに侵攻したロシアに対して、米国は厳しい経済制裁を科した。その中心的な内容は、クロスボーダー決済における米ドルの利用を禁止することだ。新興国の中には米国と対立を抱える国も多く、そうした国々が金を買う動きを強めた。