防衛予算を最大で名目GDP(国内総生産)の3.5%程度に引き上げる意向を示したマクロン大統領だが、財源問題は解決していない(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)防衛予算を最大で名目GDP(国内総生産)の3.5%程度に引き上げる意向を示したマクロン大統領だが、財源問題は解決していない(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 フランスのマクロン大統領は防衛予算を最大で名目GDP(国内総生産)の3.5%程度に引き上げる意向を示した。財源確保という難題が残るが、増税という選択肢を封じる中で浮上したのが個人投資家向け防衛ファンドである。果たして、フランスは何を考えているのだろうか。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 米国による圧迫の下、防衛体制の強化がグローバルなテーマとなっている。一方で、その財源をどう手当てするか、各国は頭を悩ませている。

 欧州連合(EU)の中心であるフランスも、そうした国の一つだ。同国のエマニュエル・マクロン大統領は3月上旬、防衛予算を最大で名目GDP(国内総生産)の3.5%程度に引き上げる意向を示した。

 現在、フランスの防衛費は名目GDPの2%程度、金額にして約600億ユーロ(8兆円程度)である(図表1)。これを名目GDPの3.5%程度に引き上げるなら、少なくとも300億ユーロの財源を確保する必要がある。だが、マクロン大統領は世論に配慮し、防衛予算の積み増しを目的とする増税は回避するとも明言した。では、どうするのか。

【図表1 フランスの防衛費】

(出所)世界銀行(出所)世界銀行

 フランス政府が導き出した答えは、政府系金融機関であるBPIフランスの下に、個人投資家を念頭に置いた防衛ファンドを新設することだった。

 エリック・ロンバール財務相が3月20日に発表したところによれば、このファンドの調達目標額は4億5000万ユーロ。一口が500ユーロからと、個人投資家も購入しやすい商品設計となっている。

 フランスの家計は資産運用熱が高いため、相応の金利を提供できるなら、個人投資家によるファンド購入が見込めると政府は踏んだようだ。

 とはいえ、防衛ファンドの規模は政府が目標とする金額にはほど遠い。防衛体制の強化という喫緊の課題に鑑みれば、起債による資金調達も視野に入るところだが、フランス財政の現状では、それもまた難しい。