ロシア経済の実情を知っているのは、他ならぬプーチン首相だろう(写真:代表撮影/AP/アフロ)ロシア経済の実情を知っているのは、他ならぬプーチン大統領だろう(写真:代表撮影/AP/アフロ)

 ロシア連邦統計局によると、2024年におけるロシアの実質GDPは前年比4.1%と前年と同水準の伸びとなった。政府と中央銀行の見通しを大きく上回る数字だが、果たしてロシア経済は好調と言えるのだろうか。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 ロシア連邦統計局によると、同国の2024年の実質GDP(国内総生産)成長率の速報値は前年比4.1%増と、前年と同水準となった。政府と中銀の見通しを大幅に上回り、ロシアの成長率はかなり上振れしたことになる。また産業別には、金融・保険(同16.5%増)や情報・通信(同11.9%増)、宿泊・飲食(同9.7%増)が好調だった。

 製造業(同7.6%増)も堅調で、その中でも金属完成品(同35.3%増)やその他車両と設備(同29.6%増)、コンピュータ・電機・光学製品(同28.8%増)が好調だった。これらの工業は軍需産業にも属するため、2024年の経済成長の上振れが、ウクライナとの戦争の長期化に伴い増大した軍需のけん引を受けた結果であることを強く示唆する。

 とはいえ、実質GDPは計算上、穴を掘っても埋めても増加する。軍需を優先して経済を動かしたところで、民需が圧迫されれば持続可能な成長とは言えない。

 現に、民需が圧迫されている可能性を強く示唆する指標として、輸入の不調がある。ロシアの輸入は2023年1-3月期の820億米ドルをピークに、700億米ドル台半ばまで水準を落としている(図表1)。

【図表1 ロシアの貿易収支(国際収支ベース)】

(注)TRAMO-SEAT法で季調を施した。(出所)ロシア中銀(注)TRAMO-SEAT法で季調を施した。(出所)ロシア中銀

 一般的に輸出入のデータは国内通貨よりも米ドルで評価した方が、実需に近い動きになる。もし民需が圧迫されていなければ、4.1%増という経済成長の下で米ドルベースの輸入が不調になることはまずありえない。ロシアのように、化石燃料を輸出して稼いだ外貨を用いて国内で不足する工業品や食料品を輸入する「資源国」ならなおさらである。

 ここで意識されるのは、米国による二次制裁のためロシアの外貨繰りが厳しくなっている可能性だ。中国を筆頭とする新興国の多くがロシアとの貿易に慎重になっており、少なくとも米ドルやユーロ、日本円などのハードカレンシーを用いた決済は容易ではなくなっている。こうした外的な経路からも、民需は圧迫されていると考えられる。

 続いて、ロシアの最大の貿易パートナーになった中国との貿易の動きを確認したい。