ロシアのLNG船(写真:ロイター/アフロ)ロシアのLNG船(写真:ロイター/アフロ)

 化石燃料の「脱ロシア化」を目指す欧州連合(EU)だが、ロシア産の液化天然ガス(LNG)の輸入を続けている。石炭と原油の輸入は減っているのに、LNGの輸入が続いているのはなぜだろうか。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 化石燃料の「脱ロシア化」を目指す欧州連合(EU)だが、ロシア産の液化天然ガス(LNG)の輸入を続けている。

 EU統計局(ユーロスタット)によれば、2024年1-11月期にEUがロシアから輸入したLNGの量は1060万トン(1440BCM)に達したようだ(図表1)。前年同期比では7%少ないが、通年の輸入量は3年連続で1200万トン前後となる模様だ。

【図表1 EUのロシア産LNG輸入量】

(出所)ユーロスタット(出所)ユーロスタット

 ロシアがウクライナに侵攻し、2025年2月で丸3年となる。この間、EUは化石燃料の脱ロシア化を目指し、石炭と原油に関してはかなりの成果を得た。一方でEUは、ロシア産ガスの削減に慎重だったが、ロシアによる「逆制裁」によってパイプラインを通じたガス供給が減ったため、非ロシア産ガスへの転換は強制的に進むことになった。

 それでもタンカーによるロシア産LNGの輸入は続いており、先述のようにユーロスタットの統計だと、その規模は年間で1200万トン程度である。

 また、ドイツの非政府組織(NGO)であるドイツ環境支援協会(DUH)は、他国のNGOと協力して推計した結果、2024年のロシア産LNG輸入量は1600万トンに達したと発表している。

 DUHによると、ロシア産LNGの輸入に際しては、ドイツの国営エネルギー会社であるSEFE(Securing Energy for Europe)社が、その主導的な役割を果たしているという。同社はもともとロシアのガスプロム社の子会社(ガスプロム・ゲルマニア)であり、戦争が生じた2022年以降はドイツ政府に接収され、ドイツの国有企業となっている。

 残念ながら、ユーロスタットの統計では、ドイツがどの程度のロシア産LNGを輸入しているか、確認できなかった。DUHによると、SEFE社はドイツにLNGを輸入する際、直接ではなく、フランスやベルギーを経由しているようだ。実態を掴むためには、DUHのようにミクロな情報を積み上げていく必要があるのだろう。