欧州難民危機では、ギリシャやイタリアに数多くの難民や移民が流入した(写真:AP/アフロ)
2月15日、欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表は「ウクライナはまだEU加盟の時期を提示する準備が整っていない」との見方を語った。ウクライナはロシアとの和平交渉に向け、保証の一環としてEU加盟の日程を明らかにすることを求めてきた。移民労働者や犯罪の増加などから拡大疲れを起こしているEUの現状とはどのようなものなのか。『EU 統治の論理と思想』(岩波新書)を上梓した慶應義塾大学名誉教授の庄司克宏氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──本書の中で、EUの加盟国がどのように増えているのかという点について書かれています。EU加盟国は増加傾向にあるのでしょうか?
庄司克宏氏(以下、庄司):最近のEU加盟国は2013年に加盟したクロアチアです。2004年に中東欧の10カ国が加盟した後に、EUは「拡大疲れ」とも言える状況に陥りました。新規加盟国からの移民労働者の大量流入や犯罪の増加などが原因です。また、EU加盟国であるハンガリーや前政権のポーランドが法の支配や人権に反する政策を取っていることも懸念材料です。
一方、加盟申請をしてもなかなか認められないモンテネグロやセルビアなどの西バルカン諸国は、逆に「加盟疲れ」に陥り、経済支援を受けるために中国やロシアに近づいています。これを懸念したEU側は、両国を加盟させなければと焦っています。
旧ソ連の一部だったウクライナやモルドバは、ロシアのウクライナ侵攻以降にEUへの加盟を申請しました。EUは積極的に受け入れようと議論はしており、将来的にEU加盟国は30カ国を超える見込みです。
──EUに加盟するためにはどんなプロセスがあるのでしょうか?
庄司:加盟するための準備はかなり大変です。加盟を目指す国は、現時点までにできたEUの法律を自国の法律にしなければなりません。本当に実行できているか、EUのコミッション(欧州委員会)によるチェックもあり、準備だけでも5年から10年ほどかかることもあります。加盟条約の批准はその後です。法律も含めて国を大改革しないとEUには入れません。
ただ、一度入ってしまえば、農業補助金や地域開発の支援金などEUから多大な補助金が出ます。経済がある程度良くなるまで支援が続くので、加盟したい国々にとってはとても魅力的に映っています。
──シェンゲン協定の前提が現在の国際情勢の中で崩壊しつつあると書かれています。
