グリーンランドの米総領事館前トランプ大統領のグリーンランド領有発言に抗議する人々(写真:ロイター/アフロ)
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(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

 欧米関係の緊張が急速に高まっている。

 年明け早々、米国のドナルド・トランプ大統領が陸軍の特殊部隊を南米のベネズエラに派遣し、ニコラス・マドゥロ大統領夫妻を拘束して米国に移送するというショッキングな出来事が生じた。背景には、ベネズエラの石油利権があるとの見方が有力である。この米国の行動に対し、欧州各国は反発した。

 さらに、トランプ政権がデンマーク領のグリーンランドに対する関心を露骨に示したことで、欧米関係が急速に緊張を強めている。もともとトランプ大統領は、前回の任期中からグリーンランドの“購入”に意欲を示していた。2025年に再登板した直後もグリーンランドの購入の可能性に言及し、欧州各国から強い反発を受けている。

 北大西洋と北極海の間にあるグリーンランドは、1721年から1953年まではデンマークの植民地だった。1979年からは自治領となり、1985年には当時のEC(現EU)から離脱するなど、ほぼ独立国家として歩んでいる。一方、グリーンランドの防衛を担当するのはデンマーク軍で、当然ながら両者の関係は引き続き緊密である。

 歴史を紐解くと、米国は周辺諸国から領土を購入することで国土を拡大させてきた。最も有名なのはアラスカの事例だ。

 もともとアラスカを開発したのは帝政ロシアだったが、クリミア戦争でひっ迫した国庫に鑑み、1867年に720万ドルで米国に売却した。こうした経緯から、現在でもアラスカではロシア正教徒の割合が他州に比べると高い。

 戦後、アラスカ州の開発が本格的に進み、天然資源の宝庫であることが明らかになったことで、ロシア(旧ソ連)の保守派の中にはアラスカの売却を国辱的行為だと評価する声が高まっている。アラスカ以外にも、カリブ海に浮かぶヴァージン諸島の西半分は、かつてデンマーク領で、米国が1917年に買収した経緯がある。