“政冷経熱”時代に突入した欧米関係
米国がグリーンランドに興味を示す最大の理由は、やはり豊富な天然資源にあるようだ。特に希土類(レアアース)の確保は、中国との間で対決姿勢を強める米国にとって重要なイシューだ。当然ながらデンマークは一方的な米国の意向に反発しているが、トランプ政権は武力行使の可能性をチラつかせるなど乱暴な姿勢である。
デンマークに呼応し、英国、ドイツ、フランス、イタリア、ポーランド、スペインの首脳らが1月6日に連名で、グリーンランドの帰属の問題を決めることができるのはグリーンランド住民とデンマーク政府のみであるという声明を出した。確かに今回の最大の問題は、トランプ政権がデンマーク住民の意向を一切、無視していることにある。
いずれにせよ、再び傍若無人ぶりを見せつける米国に対して、欧州は神経をかなり尖らせている。これでは米国が主導するウクライナ和平協議など、誰も聞く耳を持たない。米国による仲介は、欧州もロシアも強く期待していたわけだが、もはや機能不全に陥ったと考えていいだろう。消極的な消耗戦が、しばらくは続くことになるのではないか。
2025年2月に米国のJ・D・バンス副大統領がドイツのミュンヘンで欧州を“口撃”して以降、欧米の関係は冷え込んでいる。さらに年明け以降のベネズエラ進行に端を発する米国による一連の介入は、さらに欧米間の緊張を高めるものだ。
もっとも、民間レベルだと、まだまだ欧米間の経済交流は活発だという非対称的な状況である。
例えば、欧州におけるデータセンター投資は、米国系の企業や投資家が関与するケースがほとんどだ。EUの執行部局である欧州委員会は、情報処理分野に関する対米デリスキングの重要性を説いているが、現実問題として、このノウハウを持つ企業は米国系以外に存在しない。
同様に、欧州の多くの企業が米国向けに消費財を輸出し続けている。また、対米輸出依存度が高いドイツの製造業などは、関税を回避するために米国進出を加速させる方向にある。投資の機会を探る米国と、販売の機会を探る欧州といったところだろう。