トランプ政権がリバランスに動く時、矢面に立つのがベッセント財務長官(写真:AP/アフロ)
(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
ドイツのミュンヘンで2月13日から15日の3日間、定例の安全保障会議が開催された。その中日である14日に米国のマルコ・ルビオ国務長官が演説。米欧の関係が一心同体との旨を発言し、融和姿勢を強調した点が興味深い。昨年の同じ場でJ・D・バンス副大統領が衝撃的な嫌欧発言をしたことと、まさに対極的である。
そのバンス副大統領は、今回のミュンヘン安全保障会議には出席しなかった。副大統領は招待されていたとのことだが、国内問題への集中を理由に欠席したようだ。ただ、これは表向きの理由だろう。この間の米欧の亀裂を象徴する人物だけに、欧州を無用に刺激したくないとの判断がトランプ政権内で働いた結果であると考える方が自然だ。
言い換えると、米トランプ政権は欧州に対して秋波を送り始めているように感じる。自らが亀裂をもたらした欧州との関係の修復を試みている節があるわけだが、一方でトランプ政権は日和見主義であるため、その本気度がどの程度かは誰もつかめないといったところだろう。欧州の対米不信はそう簡単に拭い去れないのではないか。
米トランプ政権の対欧姿勢の変化の裏には、政権内のパワーバランスの変化があるように見受けられる。つまり年明け以降、穏健派であり良識派とされるルビオ国務長官であり、スコット・ベッセント財務長官が矢面に立っている。一方、強硬派であり過激派のピーター・ナバロ貿易・製造業担当上級顧問らは今は影を潜めている感がある。
これは昨年4月、いわゆる相互関税を発表した直後の動きによく似ている。ナバロ氏らの構想に基づく相互関税のプランが発表されると、米国の金融市場がトリプル安に陥り、グローバルな金融不安に発展した。その際、火消しに回ったのがベッセント財務長官だ。彼が矢面に立つ時こそトランプ政権のリバランスのタイミングのようだ。