相互依存という“安全装置”はいつまで機能するか

 覇権国たる米国の役割の再構築を進めようとするバンス副大統領やナバロ上級顧問らにとって、戦後以来の相互依存関係は“呪縛”に等しいのかもしれない。一方で、その呪縛を無理やり解き放とうとすると、米国が強い返り血を浴びることをベッセント財務長官らは懸念している。現に中国は、金融市場を通じて米国に強い圧力をかけている。

 ゆえに、ベッセント財務長官やルビオ国務長官らは、関係が悪化したとはいえつながりが深い欧州に秋波を送っているのだろう。結局、欧州を除けば、米国がパートナーシップを築ける相手は特にいないということかもしれない。ただし、欧州の対米不信もトランプ政権の下で深くなったし、トランプ政権の日和見主義に対する警戒も燻り続ける。

 米国では11月に中間選挙が行われるが、インフレが止まらないこともあり、トランプ政権の支持率は低迷したままである。ここで金融不安が再燃し、景気が圧迫されようものなら、次期大統領選での共和党の勝利はますます遠くなる。そうしたノイズを可能な限り排除したいというトランプ政権の思惑が、欧州へ送った秋波からは見え隠れする。

 結局のところ、米国を頂点とする世界の相互依存関係は、米国の暴走を止める“安全装置”として機能している。ゆえにトランプ政権の理想は現実に押し返されるわけであり、年明け以降の米欧関係の展開は、そうした大きな力学に沿っている現象と言えるのではないか。一方で、安全装置がいつまで機能するか定かではないこともまた確かだ。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

【土田陽介(つちだ・ようすけ)】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)、『基軸通貨: ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)がある。