欧州理事会、欧州議会、欧州委員会のそれぞれの役割
──ブレグジットのように出ていくことを考え始める加盟国は増えているのでしょうか。
庄司:それはどうでしょう。イギリスに関して言えば、ブレグジットを後悔する国民の声が大きいと思います。
イギリスは小選挙区制の国ですから、もう一度EUに加盟しようと主張する政党が政権を取り、国民投票で支持を得ないと復帰はありません。小選挙区制はなかなか世論調査の想定通りに議員が選出されませんから、イギリスのEU復帰は当面ないと思います。
──通貨、金融、安全保障、環境対策など、EUはさまざまなテーマを持っているようですが、もともとはどのような連携から始まったのでしょうか。かつてお話をうかがったあるイギリスの政治学者は「EUとは経済でつながった国々のまとまりである」と言っていました。
庄司:イギリス人らしい考え方です。というのも、イギリスが1950年代に当初はEUに参加せず、1973年に加盟したのは自国経済を立て直すためだったからです。
EUは欧州の石炭鉄鋼共同体の創設から始まりました。石炭や鉄鋼の生産・流通を超国家機関に委ねることによって、フランスとドイツの敵対関係に終止符を打つことが目的です。もともと平和と安定という政治的動機から始まっています。
1951年に設立された欧州石炭鉄鋼共同体(写真:AP/アフロ)
──ブリュッセルやルクセンブルクなど、EUの中心になる機関はいくつかの場所に存在しています。EUの中心はどこにあると考えたらいいのでしょうか。
庄司:中心が一カ所に集まらないのは、各国が自分のところにEUの機関に来てほしいからです。EUの機関が来れば、その街の名声は高まり、雇用も生まれ、情報も取りやすくなる。
初めにフランス、ドイツやイタリアが関係機関を取り合ったのですが、大国同士ではなかなか折り合いがつきません。そこで、ベルギーやルクセンブルクといった小さな国に置くことで落ち着いたのです。特にベルギーの首都ブリュッセルに主要な機関が集まっているので、事実上の本部があるのはブリュッセルです。
──欧州理事会、欧州議会、欧州委員会(コミッション)と中心的な機関が分かれていますが、どのように役割が異なるのでしょうか?
庄司:EUの最高意思決定機関はEUの首脳会議である欧州理事会です。ここで、EUの基本方針が決められます。具体的な政策や立法はコミッションが提案権を独占的に行使し、決まったことに基づいて閣僚理事会と欧州議会が共同で立法を行います。
欧州議会は、各国で直接選挙された720人の議員で構成されますが、この720人は国の代表ではなく、EU市民の代表という位置づけです。閣僚理事会は、各国の大臣27人で構成され、それぞれの国益と調整しながら立法に当たります。
コミッションは各加盟国から1人、合計27人で構成されますが、任命後は政治的独立性の下、EU全体の利益を考えて議論します。EUの立法に参加するコミッション、欧州理事会、欧州議会は、それぞれ代表する利益が異なるのです。