ロシアン・スシは日本のスシとかなり違う(写真:hanasaki/イメージマート)
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(安木 新一郎:函館大学教授)

実はロシアは水産物輸入大国

 ロシアと言えば、カニ、サケ、イクラ、タラなど漁業大国のイメージが強いが、一方でサーモンやエビを大量に輸入している国でもある。

 ロシアでは昔からコイ、ナマズ、ウナギ、チョウザメ、遡上してきたサケマスなど主に淡水魚を食べてきた。そのため、1991年にソ連が解体され、日本の寿司が紹介されると、至るところに「スシ・バー」が登場した。現在ではスーパーマーケットなどでも売っている。スシはチェーン店のハンバーガーセットよりも安い、手軽な国民食になった。

 ただし、「ロシアン・スシ」は日本の寿司とはかなり違う。まず、握りではなくロールが中心で酢飯を使わない。また、海苔ではなくブリヌイというクレープで具材を巻いたものや、米の代わりにソバの実を使ったものもある。ちなみに、ロシア人はソバが大好きで、1人当たり年間消費量は日本の7倍にものぼる。

 ソ連時代、米はウズベク料理のプロフ(ピラフ)といった、非ロシア人の食べ物という感覚だった。ところが、スシ・ブームが到来すると、ロシア南部のクラスノダール地方、歴史的にはクバンと呼ばれる地域に中央アジアから2万人の朝鮮人が移住したこともあって稲作が急激に拡大した。いわゆる「クバン米」はジャポニカ種で、安くておいしい米だ。

 さて、ロシアン・スシの具材はウナギ、アボカド、チーズなどさまざまだが、何といってもサーモンが重要だ。生食できるサーモンをロシアは全く自給できていないので輸入するしかない。

 日本の影響でロシアン・スシなしでは生きられなくなったロシア人は、サーモンやエビの獲得に苦慮することとなった。