トランプ関税に左右されるエビ貿易
モスクワ周辺で生産されるトラウト・サーモンの卸売価格はキロ500ルーブル(約1000円)にまで上昇し、トルコ産401ルーブル、中国産351ルーブル、イラン産362ルーブル(いずれも通関時の価格)といった外国産に価格競争力で負けている。
外国産サーモンに関税をかけないと国内養殖業は壊滅する可能性もあるが、国内生産も輸入も減り、モスクワのスーパーでサーモン・ロールが安く買えなくなると、1991年のクーデターのように、プーチン政権への反乱が起きかねない。
1991年夏のクーデターの背景にあった深刻な危機のひとつは、米国とカナダによる小麦供給停止措置だった。モスクワ市民を飢えさせる政権が存続できないことを、プーチン大統領はよく理解しているだろう。サーモンに関税はかけられないのだ。
FAO(国連食糧農業機関)によると、2024年12月~2025年12月期のエビの国際価格は15パーセントも上昇した。アルゼンチンアカエビの漁期が例年より2カ月遅れの8月からになってしまったこともあり、2025年の水揚げ量が前年比15.8パーセント減の18.7万トンだったことも、価格上昇の要因と考えられる。
養殖エビについては、昨年、ベトナムやエクアドルの米国向けエビ輸出が顕著に増加した。米国がインドやインドネシアといった、他のエビ輸出国に関税をかけたからだ。
2025年のベトナムの甲殻類の輸出額は、前年比19パーセント増の46億ドルになった。バナメイエビが29.8億ドルで全体の3分の2を占め、ブラックタイガーも4.5億ドルに達した。米国向けのエビの輸出量の増加が全体をけん引したかたちだ。
南米エクアドルのエビ輸出について見ると、2025年は前年比2割増の84億ドルに達し、初めて原油を上回った。エクアドルのエビ輸出の半分が中国向けだったものの、米国向けも増加した。
原油の価格動向が不透明で、伝統的な農産品であるバナナ、カカオ、コーヒーに代わる主力輸出品としてエビ養殖が伸びたのはいいが、中国依存傾向に拍車がかかるのは避けたい。こうした中、トランプ大統領の対インド相殺関税がエクアドルにはプラスに働いたことになる。
とはいえ、2026年2月2日、トランプ大統領はインドのモディ首相と電話会談し、米国がインドからの輸入品に上乗せしていた関税が50パーセントから18パーセントに引き下げられることになった。インドからのエビ輸出が回復すると、今後のエクアドルの大幅増加は見込めそうにない。