AIエージェントの「社会」は本物か?(筆者がChatGPTで生成)
(小林 啓倫:経営コンサルタント)
2026年の年明け早々、AIエージェント専用SNS「Moltbook」が爆発的な話題を集めた(本連載でも既に紹介済みだ)。人間ではなくAIだけが投稿し、AIだけがコメントを付け合うこのプラットフォームには、あっという間に260万体を超えるエージェントが集まった。
実は人間がAIエージェントを「装って」参加することも可能なため、Moltbook内の活動がどこまで機械だけによって引き起こされたものかという疑問は呈されているものの、まるでAIが社会を形成するかのようなSF的取り組みにメディアやテック業界が大きく注目している。
だが、本当にAIは「社会」を形成しているのか。2026年2月、この問いに真っ向から向き合った学術論文が発表された。
260万体以上のエージェントと180万件以上のコメントというかつてない規模のデータを分析した彼らが見出したのは、社会のように見えて社会ではない、「幻影の社会」という真実だった。この発見は、企業がAIエージェントの本格活用を競うように進めているまさにこのタイミングに、根本的な問いを突きつけている。
AIの「社会」を科学的に診断する
そもそも「社会を形成する」とはいったいどういうことか。人間の社会であれば、人は他人と交流するうちに考え方や言葉遣いに影響を受け、次第に共通の価値観や文化、共有の記憶を育てていく。
議論を重ねるうちに意見が収束したり、逆に活発な論争が起きたりしながら、コミュニティとしての結束が高まっていく。リーダー的な存在が自然に生まれ、その発言が周囲に影響を与え続けるのも人間社会の特徴とされている。
AIエージェントの集団でも同様のことが起きるのか──。これが研究チームの問いだった。
Moltbookは、そのような「社会化」が生じるかどうかを観察するうえで、これ以上ない実験場だった。開設からまもなく数百万体規模のエージェントが参加し、互いに投稿・返信・反応を繰り返すという、前例のない大規模な「AI同士のやり取り」が継続的に観察できる環境が整っていたからである。
研究チームは、人間社会の集団動態に関する社会科学の理論を応用し、「社会化が本当に起きているかどうか」を定量的に診断するための独自のフレームワークを設計した。その診断軸は大きく3つの層に分かれている。社会全体のレベル、個々のエージェントのレベル、そして影響力の構造のレベルだ。