小泉八雲(左)とセツ
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(鷹橋忍:ライター)

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』では、英語を解せない主人公・松野トキが、トミー・バストウが演じるレフカダ・ヘブンと意思の疎通を図れず、苦労している。では、松野トキとレフカダ・ヘブンのモデルである、小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は、どのようにコミュニケーションをとっていたのだろうか。

言葉の壁

 明治24年(1891)2月のはじめ頃に、小泉セツがラフカディオ・ハーンの家で住み込みで働くことになったのが、二人の出会いと考えられており(小泉八雲記念館 『小泉セツ ラフカディオ・ハーンの妻として生きて』)、やがて二人は、「夫婦」として暮らしはじめることになる。

 セツは、「当時、二人の会話の不都合に苦労させられた」と結婚当初を振り返っており(『八雲の妻 小泉セツの生涯』長谷川洋二)、ドラマの松野トキとレフカダ・ヘブンと同じように、切実な言葉の壁が存在した。

 当初は、ハーンが辞書をめくりながら、カタコトの日本語で意思疎通を図っていた。

 だが、複雑な話になると、吉沢亮が演じる錦織友一のモデル・西田千太郎が通訳として間に入ることも、しばしばあったようである。

 そんなセツとハーンが生み出したのが、「ヘルン言葉」である。