「英語覚え書き帳」に書き残された甘い言葉

 明治24年(1891)11月、ハーンの転任のため、セツとハーンは松江から熊本に居を移した。

 この熊本時代の明治26年(1893)1月頃から、セツはハーンから英語のレッスンを受けている。

「マント 月げつ」、「ヒー 其男」、「トリシテ のどがかわく」、「カプテン 大尉」のように、セツがレッスンの際に聴き取った発音やその意味が、日本語で記されたノート「英語覚え書き帳」が2冊、今も残されている。

 その中に意味が記されていない、「ユオ、アーラ、デー、スエテーシタ、レトル、オメン、エン、デー、ホーラ、ワラーダ」という一文がある。

 ハーンが口にしたと思われるこの言葉は、「あなたは全世界で一番スウィートなかわいい女性です」という意味である。

 英語のレッスンは、二人の絆をいっそう深めたに違いない。