街頭演説で支持を訴える自民党総裁の高市首相=29日午後、徳島県板野町(写真:共同通信社)
目次

(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)

「裏金議員」に国家予算を委ねられるか

 2026年の総選挙では、政治とカネの問題は中心的話題になりえていない。だが、筆者は小欄をはじめ各所で幾度も取り上げてきたように重要な問題だと考えている。

衆院解散、何度でも問われるべき自民党「政治とカネ」の罪、“他党も同じ”では済まない桁違いの悪質性 【西田亮介の週刊時評】| JBpress

 多くの人は誤解しているかもしれないが、議決して国家予算を確定させるのは国会である。内閣でも、政権でもない(内閣は閣議決定して予算案を作る)。

 高市政権は過去最大の約120兆円の予算案を立てたが、確定させるのは国会議員だ。先の通常国会のように、多党化時代には予算案を修正、変更することもありえるし、補助や控除を伴う法律を立法することもある。

 さて、そんな国会議員が本当に政治とカネにクリーンでなくて構わないのだろうか。

 筆者はそうは考えない。

 そのうえで自民党の裏金議員たち、そして目下の選挙における裏金候補各氏は禊を済ませたのだろうか。

 高市総理も自民党幹部も、先の総裁選渦中には「禊は済んだ」といい、最近では「禊は済んでいない」「禊ということではない」と述べるなどどうもはっきりしない。

自民の裏金議員公認、高市氏「ぜひ働く機会を」 みそぎの認識問われ:朝日新聞
「裏金候補」自民37人公認 首相基盤強化?党内に懸念も【26衆院選】:時事ドットコム

「政治とカネ」の問題を、これほどまでに執拗に問い続けなければならないのはなぜか。

 それは、この問題が単なる政治家の処世術や派閥の慣習といった問題ではなく、民主主義の根幹をなす「信頼」というインフラストラクチャーを破壊する行為に他ならないからだ。

 最近は少なくない有権者や有識者、政治家のあいだで、「細かいカネの話よりも、外交や経済といった大局的な政策論争を優先すべきだ」という声が大きいことはよく承知している。

 確かに、安全保障環境の激変や少子高齢化、経済再生といった課題は待ったなしだろう。しかし、あえて言いたいのは、小さな(金額の)カネの管理さえ合法的かつ適切に行えない人間に、120兆円もの巨額な国家予算の配分を委ねられるのかということだ。

 かつての田中角栄幻想とでもいうべきか、高度経済成長の果実を配分し、現行の制度下でもない時代の話である。そもそも仮に田中角栄が「大人物」だとして、政治家はそんな大人物ばかりなのだろうか。

 前述のように、立法府の構成員である国会議員の最も大きな責務は、国民から徴収した税金の使い道を決めること、すなわち予算の議決である。党内抗争や、野党との駆け引きの中で、予算案は審議され、修正され、最終的に成立する。

 医療、福祉、教育、防衛、そして公共事業と、国民生活のあらゆる側面に浸透している。その配分の決定権を持つ者が、自らの懐に入る数百万、数千万円単位の資金処理において、遵法精神と政治倫理を無視してグレーゾーンを追求し、記載を怠り、あるいは意図的に裏金化していたわけであるから、それはもはや資質の問題ではない。統治の正統性の危機とさえいえるだろう。