脱法行為に「お墨付き」を与えてしまうのは有権者だ
120兆円という途方もない国家予算の原資は、国民が汗水垂らして働いた対価から徴収される税金である。消費税、所得税、住民税。国民には1円単位の納税義務が課され、申告漏れがあれば厳しい追徴課税や重加算税が待っている。
そのような状況下で、立法府の人間だけが、数百万、数千万の裏金を「事務的なミス」「秘書のせい」で済ませ開き直るようなことが許される社会であってよいはずがないと筆者は考える。
もし、有権者が「他に選択肢がない」「野党も頼りない」という消極的な理由で、禊の済んでいない裏金議員たちを再び国会の場に送り出すとすれば、それは事実上、政治家の腐敗を追認し、脱法行為に「お墨付き」を与えることと同義となりかねないし、おそらくそのようなロジックが成立する日を当事者らは心待ちにしていることであろう。
そして、そのような暁には、ますます大手を振って「禊は済んだ」という表現が使われてしまうだろう。
自民党が自ら自浄能力を発揮できないのであれば、外部からの強制的な洗浄、すなわち有権者による厳しい審判以外に、この国を正常化する道はない。30年以上にわたって解決されない日本政治の宿痾であるところの政治とカネ問題の歴史がそのことを雄弁に物語っている。
自民党総裁の高市早苗首相と日本維新の会の吉村洋文代表らの街頭演説会場で掲げられた、裏金問題への抗議の意を示すプラカード=27日、東京・秋葉原(写真:共同通信社)
高市総理は「ぜひ働く機会を」と述べ、裏金議員の彼ら彼女らを擁護した。それは党の総裁としての温情かもしれないし、自身の権力基盤を強化するための計算なのだろう。
しかし、国民の代表である政治家に「働く機会」を与えるかどうかを決めるのは、総理大臣ではない。
主権者である国民一人ひとりである。
裏金問題に関与した議員たちが、この数年間で真に反省し、生まれ変わったと判断できる材料はどこにあるのだろうか。説明責任を果たしたか。国会が閉会したことで、時間切れのまま政治倫理審査会において説明責任を果たしていない裏金議員は70人以上もいるのである。
◎裏金議員73人、政倫審に応ぜず閉会 「レッテル貼られるだけ」:朝日新聞
自民党は例えば、政倫審改革を主体的かつ積極的に提案しただろうか(手前味噌だが、24年の参院政治改革特別委における意見陳述時に、筆者は政倫審改革を提案している)。
そして何より、彼ら彼女らは120兆円もの我々の税金を扱うにふさわしい倫理観を取り戻したのだろうか。
答えが「否」であるならば、投票行動は自ずと定まるはずだ。何度でも繰り返すが、政治とカネの問題は終わった話ではない。
声高に繰り返される「他党も同じ」「禊は済んだ」という根拠のないレトリックに惑わされてはいけない。