新モンロー主義に舵を切った米国と台湾を睨む中国にどう向き合うか(写真:新華社/アフロ)
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 高い支持率を背景に衆院解散に踏み切った高市総理は、解散の1つの理由として「安全保障戦略の抜本強化やインテリジェンス機能の強化といった重要政策の大転換を図る上で、国民の信を得たい」と語った。選挙後の政権は、どのように外交・安全保障政策を考えなければならないのか。第二次安倍政権で内閣官房副長官補を務めた兼原信克氏(笹川平和財団・常務理事)に聞いた。(聞き手:河合達郎)

──ベネズエラでの軍事作戦は「モンロー主義」であると米トランプ大統領は言っています。この間の米国の動きをどのように捉えていますか?

兼原信克氏(以下、兼原):まず前提として、米国で続いているトランプ支持の熱狂があります。トランプ氏は不満を持っている低所得層に火をつけてしまいました。その火は消えず、トランプ氏がいないと選挙に勝てない共和党は言いなりになってしまった。共和党が半ばプロレタリア党になっているということです。

 一番下の層を吸い上げたのがトランプ大統領だから「外国で戦争なんてとんでもない」「そんなカネがあるなら国内に使え」という発想になります。パールハーバーの前の米国と同じです。アメリカファーストの孤立主義、平和主義です。

 トランプ大統領はああいう性格ですからね。自分の言葉でどこまで論理的に考え詰めているのか分かりませんが、周辺の者たちが彼の考えを忖度しながらまとめたのが12月に発表された国家安全保障戦略です。これが「新モンロー主義」と呼ばれている。

 米国はもはや世界全体を取り締まる警察官でいるつもりはありません。米国にとって大事なのは自分の安全保障と直結する範囲、つまりグリーンランドからアルゼンチンまでです。香港企業がパナマ運河を運営していることが許せず、トランプ政権はパナマから追い出しました。また、レアアースのあるグリーンランドは地政学的にも戦略拠点として必要です。

欧州には「お前らサボりすぎだろ」

──常に中国を警戒していますね。

兼原:米国から見ると、ヨーロッパと中国は同じ経済サイズで、日本の4倍です。ロシアの経済規模は韓国より少し大きいくらいで、日本の4分の1ほどです。つまりEUの経済規模はロシアの16倍という計算です。なぜウクライナ戦争のために米国がこんなに拠出しなければならないのか。「お前らサボりすぎだろ」と欧州に言っているのです。

 中東では、イスラエルがイランを孤立させてサウジアラビアと仲良くなりたいので、トランプ大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー氏が奔走して、モロッコ、西サハラ、バーレーン、カタールと交渉を進め、最後に本丸のサウジとイスラエルを組ませようとしたところでハマスが暴発しました。

 ネタニヤフ首相が徹底的に攻撃したので、ハマスは相当に追い込まれています。停戦まで漕ぎ着けましたが、まだハマスは武装解除をしていません。それでも一区切りということで、トランプ大統領は「平和理事会(ボードオブピース)」を立ち上げて、ガザはこのまま何とか上手くやってほしいと願っている。欧州諸国はそっぽを向いていますが。

 問題はアジアです。中国は単体でEUと同じサイズになってしまった。中国の軍事費(国防予算)は37兆円前後と発表されていますが、実際は50兆円ほどあると思います。中国政府が軍事技術開発費を入れずに数字を出しているからです。日本の防衛費はわずか10兆円です。