ロンドンのど真ん中、承認された中国の「メガ大使館」建設計画には抗議活動が繰り広げられてきた(写真:ロイター/アフロ)
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 (福島 香織:ジャーナリスト)

 英国政府は20日、ロンドンの旧王立造幣局(ロイヤル・ミントコート)跡地での中国大型大使館建設計画の申請を、ついに承認することになった。世界遺産のロンドン塔のすぐそば、金融街のど真ん中に位置するこの土地に、欧州一大きい2ヘクタール、サッカー場3つ分という巨大大使館が建設されることになる。

 この計画をめぐっては、中国に警戒心を抱く保守系の議員や、米国らの懸念、そして市民や人権活動家の抵抗があり、英国政府はこれまで何度も承認審査を延期してきた。

 その英国政府が、なぜ今になって、この計画を受け入れる決断をしたのか。そして、中国にとって、ファイブアイズの中心国の英国にこの計画を認めさせたことは、どのような意義があったのか。世界情勢の変化を踏まえて背景を考えてみたい。

超巨大な中国大使館に対する懸念、スパイ活動の拠点に?

 英国政府が承認した中国の“メガトン級”の大使館建設計画は多くの英国議員、近隣住民から反対され、連日数千人規模の反対デモも展開されていた。理由は、この大使館がスパイ活動の拠点になったり、あるいは英国に亡命、あるいは移住してきた香港市民や華人民主活動家らの監視施設になったりするのではないか、という懸念からだ。

 ロイヤル・ミントコートはおよそ2ヘクタール(2万平方メートル)の広大な土地で、金融街シティに隣接し、多くのグローバル企業がオフィスを構えるカナリーワーフにも近く、国際的に有名な金融・ビジネス・貿易センターに位置する。この地域の地下には、日々膨大な金融取引情報を即時に通信するための大量の光ファイバーケーブルが埋設されている。

 もし、中国がその気になれば、そうした光ファイバーに細工をして、情報を盗みとったり、あるいは世界の金融を麻痺させたりすることだってできるかもしれない、と疑う人達もいる。さらにデイリー・テレグラフによれば、200室以上におよぶ地下室もつくられる設計になっており、そのうち一室は光ケーブルに非常に近いという。

 こうした秘密の地下室が実は英国に亡命したり、移住している反共産党的香港人や華人を拉致して収監したりするために使われるのでは、という怖い噂まで広がった。

 大使館建設工事は、二級歴史建造物に指定されているジョンソン・スミーク・ビルディングと船員登記局ビル(シーマンズ・レジストリー)の改修を伴うもので、こうした歴史的建造物の保護や管理を中国に任せてよいのかという論争も引き起こした。

 さらにロイヤル・ミントコートのあった場所は1350年にイングランド王エドワード3世がロンドン市に寄贈した「聖メアリー・グレイセス修道院」があったところで、その遺構が中国大使館に管理されることにもなる。もし、中国大使館がこの場所に建設されれば、こうした文化遺産を見学したい観光客や市民は、中国側の大使館入館に必要な安全検査を受けなければいけない、と中国側は説明している。

 中国大使館建設に反対する市民たちの中には、こうした中国側の安全検査が、例えば英国市民や観光客に対するイデオロギーチェックや、亡命香港人、華人に対して危険をもたらす可能性があるかもしれない、と主張する人もいる。

 この土地は1967年に造幣局移転後、数度の転売をへて民間の不動産会社が所有。2018年に中国政府が2億5500万ポンド(約505億円)という標準価格を大きく上回る高額で購入。2022年に、新しい大使館を建設する計画を地元区議会に申請していた。