中国寄りのスターマー政権、米トランプ政権の横暴に嫌気?

 まず、スターマーはもともと親中派であり、経済再建のために中国政府との関係を回復したいと考えていると公表していた。もちろん、中国に対する脅威は認識しているようだが、ロンドン中に領事機能が分散している今の状態よりも、単一のメガ大使館の方が管理しやすい、というMI5と政府通信本部GCHQの調査に基づく見解を支持していた。

 また英国としてはジェームズ・ボンドの国として、たとえメガ大使館が建設され、英国内で活動する中国人外交官の数が増えたからといって、監視・管理ができず、スパイ活動を自由にさせてしまうということはありえない、というプライドの問題もある。加えて米トランプ政権や米国議会から、大使館計画を承認すればロンドンが中国スパイの巣窟になる、といった懸念を繰り返し指摘されると、むしろこのプライドからなおさら反発してしまうのかもしれない。

 英国政府は、国内情報機関の調査をもとに、ファイブアイズ同盟国に「コントロール不可能なリスクはない」と説明。MI5は「すべての外国大使館のリスクがゼロになることは不可能だが、現在情報機関と政府機関が策定した措置は専門的かつ適切である」と述べた。ケーブルを含むセキュリティ問題に対処できる緩和策を盛り込んだ機密ブリーフィングを提出したという。

 だが、この主張に、保守党のクリス・フィルプらは、「恥知らずな投降」と批判している。
 
 もう一つ背景を付け加えれば、スターマーは近く訪中を控えていることが大きい。この訪中前に中国大使館建設計画を承認することで、訪中時にテリーザ政権時代の英中ビジネス黄金時代の復活を表明できるような経済協力協議に調印したい考えらしい。これは保守派から「経済と国家安全のバーター」と批判を受けている。
 
 英国が中国にあからさまに傾斜するもう一つの考え方としては、米トランプ政権の「暴走」を指摘する声もある。

 今年に入って米トランプ政権はベネズエラ作戦のほか、イラン反政府デモへの介入をほのめかしたり、グリーランド割譲要求と、それに反発する欧州勢ら同盟国への追加関税をちらつかせたりと強硬手段を連発している。グリーランド問題に関する追加関税は撤回されたものの、英国を含む欧州勢はトランプのこうした姿勢に警戒心を高めている。