香港高層マンションの大火災、多くの市民は背後にある「汚職」を疑っている(写真:ZUMA Press/アフロ)
(福島 香織:ジャーナリスト)
香港のマンション大火災は、おそらく香港史上、2番目か3番目に人的被害が大きい火災として歴史に刻まれることだろう。3日、死者の捜索が打ち切られた。死者数は159人、負傷者は70人以上、安否不明者も30人(4日時点)。犠牲者と遺族に哀悼をささげ、負傷者、被災者の一刻も早い回復を祈るばかりだ。
しかし、いまだに出火の原因が報じられておらず、延焼の大きさや消火に時間がかかった理由についても議論が紛糾している。なのに、15人もの逮捕者が早々に出ているのはなぜなのだろう。一部報道では火災の大規模化の原因として、可燃性のネットや竹の足場を挙げているようだが、それだけではない、という声も大きい。背後にある闇について考えてみたい。
消防・救急要員延べ1200人以上が出動
火災は香港北部の大埔区大埔宏福苑という31階建てマンションで26日午後2時51分に発生した。このマンションは築40年以上で、全部で8棟。ワンフロア8部屋で1棟240世帯前後が暮らす。大規模外壁修繕工事を行っており、香港でよく見かける竹を使った足場が外壁にそって組まれ、それを防護ネットが覆うような格好になっていた。
火災はそのうちの1棟の低層階から出火、8棟のうち7棟に延焼。窓ガラスを保護する発泡スチロールから防護ネットに燃えうつり、風にあおられた炎は、およそ20分後には手の付けられないほどの勢いになったという。
焼け落ちた防護ネットが邪魔になって消防車がうまく近づけないなど、消火活動は手こずったようで、午後3時2分に火災警報レベル3級、3時34分に4級、6時22分に5級と跳ねあがった。
香港政府によれば、最終的に消防署は計200台以上の消防車両と約100台の救急車両を動員し、延べ1200人以上の消防・救急要員を派遣し、27日深夜になってようやく鎮火させたという。
香港でこれほどの人的被害を出した火災は、死者600人以上を出した1918年の競馬場火災、170人以上の死者を出した1948年の永安倉庫火災とはるか以前の話だ。今回の火災はひょっとすると今後、永安倉庫火災を超える犠牲に達するかもしれない。