中国の薛剣・駐大阪総領事(5月25日撮影、写真:新華社/アフロ)
薛剣、イスラエルをナチス・ドイツと比較
中国の薛剣(Xue Jian)駐大阪総領事(57)が11月8日、高市早苗首相の衆院予算委員会での台湾有事を巡る問題についての答弁について、X(旧ツイッター)に書き込んだ内容が米国でも大問題になっている。
「33年歴のベテラン外交官にはあるまじき、外交儀礼を無視した、横暴で下卑た発言である」(米元国務省高官)。
薛剣・駐大阪総領事が投稿した内容はこうだ。
「勝手に突っ込んできたその汚い首は、一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟はできているのか」
(Chinese Consul-General Threatens to Cut Takaichi's Head 'Right off')
(Chinese diplomat threatens to ‘cut dirty neck’ of Japanese PM)
アジア担当の米元外交官K氏は開口一番、「(日本政府は)国外退去処分にすべきだ。母国に帰れば英雄扱いされるだろうよ」と吐き捨てるように言った。
先のドナルド・トランプ大統領の訪日を成功裏に演出した大統領の腹心、ジョージ・グラス駐日米大使は、高市氏を脅した薛剣発言に反発、直ちにXにこう書き込んだ。
"The mask slips — again. Just a few months ago, @xuejianosaka compared Israel with Nazi Germany. Now, he threatens Prime Minister @takaichi_sanae and the Japanese people."
(再び本性が露呈した。ほんの数カ月前、中国の薛剣・駐大阪総領事はイスラエルをナチス・ドイツになぞらえたばかりだ。今度は、高市首相と日本国民を脅しにかかっている)
(ジョージ・グラス駐日米国大使 (@USAmbJapan) / X)
薛剣氏は2025年6月にもXにイスラエルとナチス・ドイツを比較した投稿をし、 駐日イスラエル大使が、「恥ずべき扇動」「反ユダヤ的で重大なホロコースト侮辱」として非難したことがある。
イスラエルはこの投稿を受けて、日本の外務省に直ちに対応するよう求めたが、日本政府は「状況を注視している」「適切な対応を検討する」と言うにとどめていたようである。
(Jerusalem slams Chinese diplomat's deleted Israel-Nazis comparison)
その後も薛剣氏は大阪総領事として外交活動を続けている。しかし、今回の発言は第三国のイスラエルではなく、赴任先・日本の首相を脅した点で話は大きく違う。
欧米では、他国に駐在する外交官が赴任地の元首や首相の生命を脅すような発言をした場合は、ペルソナ・ノン・グラータ(Persona non grata=好ましからざる人物)として国外退去処分を受けるケースが少なくない。
特に米国では、一般人が自国の元首や政府首脳を直接的に「殺せ」等と具体的に威嚇すれば、連邦法により起訴→刑罰(懲役・罰金)になる可能性が高い。
ただし、起訴・有罪のためには「真の脅迫」であり、かつ適切な犯意(Mens Rea=故意・主観的意図)が立証されなければならない。
とはいえ、米国に常勤の外交官の場合は刑事罰は原則適用不可だ。代わりに国外退去や外交的報復が取られる。