初の女性首相となった高市早苗・第104代内閣総理大臣(10月21日首相官邸での就任会見で、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

「シンゾー」を偲び、約6年ぶりの来日

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 ドナルド・トランプ米大統領が10月下旬、約6年ぶりに来日することが決まった。

 第1期政権の2019年5月の「令和初の国賓訪問」以来だ。

 首班指名で産みの苦しみを経て史上初の女性首相になった高市早苗氏は、米国内では盟友だった故安倍晋三氏の秘蔵っ子とみなされており、トランプ氏は特別の想いを抱いて日本の土を踏むに違いない。

 トランプ氏としては、この機会に高市新首相と個人的な関係を築き、同盟国である日本の支持を確保する狙いがある。そのための政策調整を進めるうえでも高市氏との「信頼構築」は極めて重要だ。

「訪日の際に新首相と日米関係の方向性を調整し、トランプ氏の政策目標(貿易・安全保障など)に日本側を巻き込む狙いがある」(米シンクタンク上級研究員)

 特に、訪日後に立ち寄る韓国では、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議に出席する中国の習近平国家主席とトランプ大統領の会談が予定されている(10月21日時点では確定の公式発表はない)。

 この会談が実現すれば、米中関係や世界経済にとって大きな影響を及ぼすのは必至だけに、日米同盟の結束を示してから米中首脳会談に臨むという戦略的意味合いがある。

 米国にとって、強固な日米同盟は対中外交戦略上、極めて重要であり、アジア地域の安全保障においては最大の抑止力だ。そのためにも日米同盟の堅持・深化は不可欠といえる。

象徴的なイベントで「見せ場」を演出

 日米外交の専門家たちは、高市・トランプ首脳会談で以下のようなテーマが話し合われると予想している。

●日米安全保障、地域情勢(特に中国・北朝鮮・インド太平洋地域)、米軍基地・共同防衛・日米安保条約といった安全保障分野での議題。

●貿易・経済の議題、特に「日本の対米投資・貸付制度(investment and lending scheme)」「関税・輸出入政策」「半導体・医薬品などの政策調整」(日本車関税、エネルギー輸入、為替レート、日本の対米約5500億ドル投資の具体化など)。

●政治的・人道的シンボルとしての重要な側面を持つ北朝鮮による拉致問題の解決、北朝鮮の非核化など朝鮮半島情勢分析のすり合わせ。

●高市氏が、トランプ氏に「強烈な個性だが、信頼できるパートナー」といった印象を残し、トランプ氏と安倍氏がドナルド、シンゾーとお互いにファーストネームで呼び合ったような個人的な関係を築くこと。

●米第7艦隊基地視察・艦船訪問、演説などを通じて、日米同盟が堅固であること、米国が日本防衛を重視しているというメッセージを国内外に発信する安全保障・同盟の「見せ場」を演出する。

●トランプ氏はパフォーマンス外交をよく用いるため、象徴的な行事(天皇謁見、基地視察、拉致被害者面会など)の機会に、訪日を「成功・重厚な外交」として演出する。

●訪日を通じて安全保障・貿易分野での「力強い外交」をアピールすることで米国内の支持基盤を強化させる。米国内に広がる「No Kings」(反トランプ運動)に対抗してトランプ外交の正当性を謳い上げる。