タラハシーの刑務所内で散歩したり走ったりしているギレーヌ・マクスウェル服役囚(7月15日、写真:The Mega Agency/アフロ)

トランプの刑事・民事訴訟は十数件

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 ドナルド・トランプ米大統領ほど裁判所と「ご縁」のある歴代大統領は今までいなかった。

 訴訟の定義によって数え方が変わるが、広義(トランプ氏本人またはトランプ政権に関係する訴訟すべて)では、行政訴訟を含めて数百件に上る。

The Criminal Trials of Donald Trump | Lawfare

 狭義(トランプ氏本人に対する主要な刑事・民事訴訟)は数件〜十数件ある。

Tracking the criminal and civil cases against Donald Trump | AP News

 米メディアの報道や公文書によれば、これから始まる可能性がある最高裁の審議で、注目されているトランプ氏関連の争点は主に次の3つ。

1.大統領が課した関税の合法性(関税関連訴訟): 行政の権限と連邦法の解釈が争点。

Top cases on the US Supreme Court's docket | Reuters

2.連邦独立機関の幹部解任権(大統領の解任権限):大統領がどこまで保護された連邦政府職員を解任できるか。

US Supreme Court starts new term, with major Trump cases in store | Reuters

3.米国で生まれた子供に対し自動的に米国籍を与える出生地主義:これを見直す大統領令も重要な争点だ。

 移民支援団体 CASA*1 などが大統領令は違憲だとして連邦地裁に提訴し、全国一律で大統領令を差し止める(universal injunction)仮処分が出ていたが、連邦最高裁は6月27日にその仮処分の適用範囲を制限する判断を示している。

 しかし、大統領令が違憲か合憲かの最高裁判断は出ておらず、今後審議が行われる可能性がある。

24A884 Trump v. CASA, Inc. 

*1=「 CASA de Maryland, Inc.(カーサ・デ・メリーランド)」。移民・ラテン系住民の権利保護、雇用支援・教育支援・地域の政治参加促進、不法移民・難民の法的支援などを行っている非営利団体(NPO)。

 これらの裁判でトランプ氏がどれだけ勝訴する見込みかは後述するとして、10月6日、同氏の出鼻をくじくような最高裁判断が下った。

 米最高裁は10月6日、トランプ氏の盟友だった故ジェフリー・エプスタイン元被告2の元恋人であるギレーヌ・マクスウェル服役囚(20年の拘禁刑)の上訴申請を拒否(棄却)した。

 同服役囚は、エプスタイン元被告が起訴された際、フロリダ州で有罪を認める司法取引として獲得した不起訴合意の対象に自分も適用されるべきだとして連邦裁に訴えていた。

*2=エプスタイン元被告は2019年7月に性的人身売買罪で起訴され、1か月後に拘置所内で自殺した。マクスウェル服役囚は、エプスタイン元被告と長年にわたり未成年の少女を誘惑し、性的虐待する計画を実行した罪で、2022年に連邦裁判所から20年の拘禁刑を宣告された。

 この服役囚が脚光を浴びていたのは、エプスタイン元被告が著名人たちを相手に行っていた未成年者買春の「顧客リスト」をはじめ、その内幕を知っている可能性があったからだ。

 もしも顧客リストの中にトランプ氏の名前があれば、その政治生命は危機を迎えかねないと米メディアは報じてきた。

 最高裁は口頭弁論も法理論争もせず、「審理断固拒否」で服役囚の無罪・減刑の扉を閉めてしまった。