自民党総裁選に勝利し記者会見する高市早苗氏(10月4日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

トランプ大統領が祝辞

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 高市早苗氏(64)が、自民党で初めての女性総裁になったことに、米メディアは驚きと好奇心をもって報道している。

 ドナルド・トランプ米大統領は10月6日午前(米国東部時間)、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」にコメントを載せた。

「彼女は深い知恵と力強さを持ち、非常に尊敬される人物です。これは日本国民にとって素晴らしいニュースです。皆様、おめでとうございます」

 一方、トランプ氏の側近ジョージ・グラス駐日米大使は、高市氏が総裁に選出されるや直ちにX(旧ツイッター)を通じて、次のような内容の祝電を送っている。

●高市氏が自民党の第29代総裁に就任され、党初の女性党首になられたことを心よりお祝い申し上げます。

●今後、あらゆる面で両国のパートナーシップを強化し、発展させていくために、高市氏と協力できることを楽しみにしています。

(米国大使、または国務省、ホワイトハウスからの祝辞は、新党首、首相、大統領の選出といった海外における政治的な節目を迅速に認識する手段。高市氏への米国大使の祝辞は、この典型的なパターンに当てはまるがスピードとトーンは、時には温かい、慎重、形式的といったニュアンスを伝えることがある)

Global reaction to Sanae Takaichi winning Japan leadership race | Reuters

NYTは「日本の右傾化の予兆」と危機感

 一方、米メディアは競って「高市氏当選」を速報した。ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、次のような内容を報じた。

●保守強硬派の高市早苗議員が、自民党総裁選で勝利を収め、日本初の女性首相誕生への道を歩み始めた。これは、政治における女性代表が著しく不足している日本において、画期的な出来事となる。

●高市氏の勝利は、日本の右傾化を予兆する可能性がある。日本では近年、賃金の停滞、物価上昇、そして外国人労働者や観光客の流入を懸念する有権者の間で反体制派政治家が支持を伸ばしている。

●高市氏の勝利は日本にとって画期的な出来事だ。同氏は自民党70年の歴史で初の女性党首となるが、女性の権利を擁護する人物とは見なされていない。

●高市氏は、女系天皇を認める法改正に反対してきた。また、夫婦同姓が義務づけられた100年以上前の法律の改正にも反対を表明し、(夫婦別姓への)法改正は離婚や不倫につながる可能性があると述べている。同性婚にも反対している。

(1898年の明治民法により、それ以前の夫婦別姓を排し、家制度の下で夫婦同姓が義務づけられた)

●高市氏の当選は、約70年間にわたり日本の主要政党として君臨してきた幅広い保守派政党である自民党の実力者たちが、高市氏こそが党の巻き返しの最大の武器だと考えていることを示唆している。

●高市氏の当選は、日本における右翼思想の人気の高まりを象徴するかもしれない。2022年に殺害された安倍晋三元首相の盟友である高市氏の台頭は、中国や韓国といった近隣諸国との緊張を高める可能性がある。

●強硬派で国家主義的な高市氏の姿勢は、第2次世界大戦中のA級戦犯を含む日本の戦没者を祀る靖国神社への定期的な参拝を含め物議を醸してきた。長年にわたり中国・韓国との外交上の緊張の原因となってきた。

●高市氏は、日本やその他のアジア同盟国に関税を課しているトランプ政権に対し、より強硬な姿勢を取る可能性がある。

●高市氏は総裁選挙期間中、米国との最近の貿易協定の再交渉を検討すると表明した唯一の候補者だった。しかし、10月4日の(総裁選挙後の)記者会見では、協定の維持に努めると述べている。

●日本は7月にトランプ政権との貿易協定を締結した後、米国経済に5500億ドルを投資する約束と引き換えに、15%という周辺国よりも低い輸出品関税の設定を得られた。

●日米両国は最近、貿易協定におけるいくつかの曖昧な点を解決したが、日本が5500億ドルを投資、融資、債務保証にどのように配分するかという重要な問題が残っている。

Japan Is Set for Its First Female Prime Minister - The New York Times