東シナ海に向かう中国の漁船団(記事のものとは別、2025年9月16日寧波市で、写真:VCG/アフロ)
466キロの「海上の壁」は何を意味するのか
1月16日付の米ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)が報じ、それを受けて17日付の韓国の朝鮮日報も報じた中国漁船数千隻による「海上の壁」。
これは、どう見ても単なる漁業活動の範疇を超えている。
NYTなどの報道によると今月11日、中国漁船約1400隻が東シナ海で南北321キロにわたり帯状に密集した。
また昨年末には、約2000隻が同じ海域でL字形の隊形を組み、その長さは466キロに達したという。
衛星データを分析したCSIS(Center for Strategic and International Studies=戦略国際問題研究所)のグレゴリー・ポーリング氏は、「操業中には見えず、国家の指示以外に説明がつかない」と指摘する。
しかも、この大規模集結は、中国軍が台湾周辺で軍事演習を実施した時期と重なっている。
これは偶然ではない。
中国が平時から民間船舶を組織化し、有事には軍事作戦へ即時転用する「海上民兵」を運用するための訓練である可能性が極めて高い。
3層構造の壁:何を狙うオペレーションか
今回の漁船団は、次の3つの目的を同時に果たす「多層的オペレーション」と考えられる。
① 海上交通路の物理的妨害(封鎖の補助線)
数千隻が帯状に密集すれば、商船や軍艦は航路を迂回せざるを得ない。
台湾への補給線は細り、海上交通路の安全性は著しく低下する。
② センサー・指揮統制への「ノイズ」
小型船舶が大量に密集すれば、台湾や米国、日本などのレーダーやドローンによる監視は飽和する。
「どれが脅威か」を識別する負荷が急増し、指揮統制の精度が落ちる。
③ 海上民兵の動員・指揮訓練
平時は漁船、危機時は軍事組織――。中国が進める「軍民融合」の典型例であり、有事即応の指揮系統を確認する訓練とみられる。
漁船は「ただの漁船」ではない。
中国にとっては、低コストで大量動員可能な「戦略的リソース」なのである。