朝鮮戦争の休戦協定に署名する北朝鮮の金日成元帥(1953年、写真:picture alliance/アフロ)

歴史の3モデル

目次

朝鮮・ベトナム・アフガンが示す「戦争終結の構造」

 戦争は偶然には終わらない。その背後には、必ず 終結へと収束させる構造的条件が存在する。

 その典型例が、朝鮮戦争・ベトナム戦争・ソ連のアフガニスタン侵攻である。

 本章では、これら3つの戦史モデルを分析し、戦争が終結へと向かう構造を抽出する。

 そのうえで、その知見を手がかりに、ウクライナ戦争の停戦シナリオを読み解いていきたい。

● 朝鮮戦争:膠着と達成目標のスケールダウンが生んだ「現状凍結型停戦」

・戦線は38度線付近で長期膠着
・双方が甚大な死傷者と国土の荒廃に直面
・「これ以上の軍事的成果は望めない」と双方が認識
・国連および同盟国の圧力により停戦交渉が加速
・結果として、「現状の戦線+安全保障枠組み」を基礎とする現状凍結型停戦へ収束

→ 決定的勝利が不可能なとき、停戦ラインは「新たな国境」へと変質する。

● ベトナム戦争:支援側・米国の政治疲れと国民の厭戦機運が撤退を強制

・米国の戦費と人的損失が限界に達する
・国内世論が「勝てない戦争」を拒否し、反戦運動が激化
・米ニクソン政権は南ベトナムのグエン・バン・ティエウ政権を事実上見捨て、「体面を保つ撤退」を選択
・パリ和平協定により米軍は撤退し、戦争は南ベトナムの崩壊へと向かう

→ 支援国・米国の政治コストが限界に達した瞬間、戦争目的は急速にスケールダウンする。

● ソ連のアフガン侵攻:共産党独裁体制の内部疲弊が生んだ撤退

・長期戦によって国家経済が深刻に疲弊
・兵士の大量損耗が社会不安と体制への不信を増幅
・党官僚・軍指導部の間で、戦争長期化への不満と責任追及の応酬が激化
・ゴルバチョフ政権は撤退を決断

→ 共産党独裁体制であっても、長期戦は体制の「内的崩壊」を加速させる。