ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領拘束に重要な任務を果たした米空軍の「F-22ラプター」。プエルトリコのセイバにある空軍基地で(1月3日撮影、米空軍のサイトより)

まえがき

目次

 本稿は、「米軍のベネズエラ電撃作戦成功の内幕を読み解く」という表題のとおり、詳細が公的に確認されていない本作戦について、報道を含む公開情報を基礎とし、筆者の軍事的知見(経験・理論など)を踏まえて分析的に検討するものである。

 以下で「敵」と記す場合は、ベネズエラ側を指す。

作戦の全体像

 本節では、米軍によるベネズエラ電撃作戦の全体構造を概観し、作戦目的、主要フェーズ、そして成功を規定した中核要素を整理する。

 本稿が扱う作戦は、多領域統合作戦(MDO)を基盤として短時間に決定的成果を獲得した事例であり、その設計は次の3層構造を中核として構築された。

①局地的制空権の迅速な確保
②ISR(情報・監視・偵察)・サイバー・電磁戦・HUMINT(Human Intelligence=人的情報)を統合した情報優越の確立
③特殊部隊による限定的かつ高精度の電撃行動

 これら3層は、事前準備・訓練・リハーサルを通じて精緻化され、秘匿された統合作戦本部(JSOTG)――実際の組織構造は公表されていない――の指揮統制の下で連続的に発動した。

 その結果、敵側の状況認識・指揮通信・防空能力は作戦初動において同時多発的に麻痺し、事前に作戦の兆候が察知されていたにもかかわらず奇襲効果が成立した。

 作戦は、最小限の戦力投入で最大の効果を引き出す「短期決定型」作戦の典型例となり、米軍の統合作戦能力が国際安全保障環境に及ぼす影響の大きさを改めて示すものとなった。

制空権の確保

 本作戦における制空権の確保は、全面的な航空優勢ではなく、特殊部隊投入に必要な「局地的かつ短時間の航空優勢(Local Air Superiority)」の形成を目的として設計された。

 まず、電磁戦およびサイバー攻撃による事前制圧が実施され、敵レーダー網の撹乱、指揮通信ネットワークの一時的麻痺、無人機を用いた欺瞞・飽和(敵の処理能力・防御能力を「容量オーバー」に追い込むこと)が行われた。

 これにより、防空網の反応速度と状況認識は大幅に低下した。

 続いて、SEAD/DEAD(防空制圧・防空破壊)により、地対空ミサイル(SAM)サイトの無力化、早期警戒レーダーの盲目化、防空指揮所の孤立化が段階的に進められた。

 これらは、敵防空能力を作戦初動で実質的に無効化するための中核工程である。

 その後、ステルス戦闘機を中心とする航空戦力が先行投入され、電子戦機による妨害・護衛と、必要に応じた無人機群による空域占有が組み合わされた。

 これにより、敵航空機の離陸阻止や滑走路監視が可能となり、作戦地域は短時間ながら実質的に「封鎖」された。

 後方には空中給油機が配置され、限定的航空優勢の継続性が確保された。

 最終段階では、特殊部隊投入のための「安全回廊」が形成され、低空侵入ルートの確保、輸送ヘリコプターおよびティルトローター機の護衛が実施された。

 作戦時間帯は極めて短く設定され、敵が反応する前に侵入・離脱を完了する構造が徹底された。