最も現実的な着地点と日本への含意
● 最も現実的な着地点
3つのシナリオのうち、最も現実的なのは A案:朝鮮戦争型「現状凍結ライン+多国籍軍」である。理由は明確だ。
・双方が「完全勝利」を実現できない構造
・米欧の支援疲れが限界に近づく局面
・ロシアの継戦能力が低下する趨勢
・多国籍軍構想が制度化へ向かう動き
・2026年に政治日程が集中するタイミング
以上の理由から、2026年は停戦の「構造条件」が最も整う年となる。
● 日本への含意
・欧州の安全保障枠組みが強化されれば、米国の対中戦略に割ける資源が増加
・日本は「欧州の安定=インド太平洋の安定」という連動性を理解すべき
・ロシアの極東戦力は長期的に弱体化し、日本の安全保障環境は変化
・停戦後の欧州秩序は、アジアの安全保障モデルにも影響を与える
あとがき(最終総括)
本稿で扱った朝鮮・ベトナム・アフガン、そしてウクライナ戦争は、いずれも国家の意思や指導者の判断だけでは終わらない。
戦争には、当事者の意図を超えて働く「構造的な収束力」が存在する。
それは、戦線の膠着であり、支援側の政治疲れであり、権威主義体制の内部疲弊である。
歴史を振り返ると、戦争の終わりは決して「偶然」ではない。
軍事・政治・経済という3つの圧力が一点に収束した瞬間に、停戦・終戦は訪れてきた。
ウクライナ戦争もまた、その例外ではない。
朝鮮戦争では、ヨシフ・スターリンの死(1953年3月5日)から停戦(1953年7月27日)まで、わずか約4か月半で情勢が急転した。
スターリン死後、ソ連指導部が「早期終結」へ舵を切ったことが、停戦交渉の加速につながったと広く評価されている。
歴史はしばしば、こうした「外生ショック」が構造を一気に動かす瞬間を伴う。
ウクライナ戦争において、スターリン死去に匹敵するような決定的な外部ショック=「停戦誘発ショック」が現時点で存在するとは言い難い。
しかし、もしそのような出来事が起これば、停戦の構造条件が一気に整う可能性は否定できない。そして、その種の出来事は本質的に予測不能である。
2026年前後に訪れる可能性がある停戦ウィンドウは、歴史が繰り返し示してきた「構造条件」が整う稀有な瞬間である。
その時、国際社会がどのような枠組みを提示し、当事者がどのような「出口」を選ぶのか。
それが、欧州の安全保障だけでなく、インド太平洋を含む世界秩序の行方を左右する。
歴史で未来を決めつけることはできない。だが、未来を読み解くための「型」を与えてくれる。
本稿が示した「型」が、複雑な国際情勢を考えるための一つの視座となれば幸いである。