ひとまず政策金利を据え置いた日銀。写真は日銀の植田総裁(写真:ロイター/アフロ
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
リスクとして認識され始めた海外経済の回復
1月22~23日に開催された日銀金融政策決定会合は、政策金利である無担保コール翌日物レートの誘導目標を0.75%で据え置くことを決定した。
会合では、政府の経済対策や賃上げの継続を踏まえ、2026年度の経済成長率と消費者物価指数(CPI)の上昇率の見通しを上方修正した。高田審議委員だけが、物価安定目標はおおむね達成されているとの見通しに立ち、「海外経済が回復局面にあるもと、国内物価の上振れリスクが高い」として現状維持に反対している。
「海外経済の回復」と「物価の上振れリスク」の間にはさまざまな因果関係が想定されるが、金融市場出身である高田審議委員は「海外景気回復→海外中央銀行の利下げ停止ひいては利上げ反転→内外金利差拡大」という展開を意識しているのではないか。
海外の中央銀行は一度方向性を変えると、まとまった期間、その方向に金利調節を続ける。そうなった場合の円安圧力は現在の比ではなく、結果的にインフレ圧力の輸入に直結する。利上げで機先を制した方が良いという発想はごく自然だ。筆者も2026年最大の円安リスクは欧米金利の再浮上にあると考えている。
政策決定会合後の記者会見では、長期金利急騰に対する日銀の問題意識を質す向きが目立った。
植田日銀総裁は金利上昇ペースを「かなり速いスピード」と形容。金融市場で日本の経済・物価・財政に関する認識が修正されている点を指摘した上で、超長期債に至っては期末要因での需給緩和も影響している旨に言及した。
注目された国債の機動的な買い入れについては議論こそされたようだが、実行に至る条件は明示されず、「財政に関する長期的な信認の維持が重要である点で政府と理解を共有している」といった点が強調されるにとどまった。実際に踏み切る意思は乏しそうだ。
そうした日銀の判断は賢明である。通貨政策で円買い為替介入の可能性が意識される中、金融政策で(政策スタンスに影響しない技術的な対応とはいえ)緩和方向にアクセルを踏む行為は政策間の整合性が問われやすいため、軽々にできる話ではない。「機動的な買い入れ」は金利を抑える代わりに円売りを加速させる。これに介入で対応すれば、文字通りマッチポンプだろう。