併発しそうな円安と金利上昇を抑え込めるか?

 今回、高田審議委員が示唆した通り、海外経済が回復過程にあることを考えれば、海外経済の回復は円安を通じて国内へのインフレ圧力に直結する可能性がある。

 既に日本では+2%以上のインフレが慢性化しているが、そのことを踏まえれば、少なくとも中立金利と思しき水準までは利上げし、「極めて低い実質金利」から脱却しておくことが健全かと思われる。懸案の需給構造が改善する中、一気呵成に金利情勢を変えていくことで円安圧力は退くだろう。

 問題はそうした理屈が想定するほど、政治的決断は容易ではないという現実にある。現在報じられている事実を踏まえると、衆院選における高市政権の大勝は確実ではなくなっているようだ。

 中途半端に勝ち、中途半端な与党勢力が維持されてしまうと、結局、多くの野党要求を詰め込む羽目になりかねない。とはいえ、与党が大勝しても「責任ある積極財政」が市場期待を支配し、円安と金利上昇の併発を招きそうな気配である。

 与野党いずれかが勝利するにせよ、消費減税が「次の一手」になりそうな中、円安と円金利上昇の併発を完全に終息させる勝算は現時点では乏しい。願わくば高市政権が勝利した上で、リフレ色の強い(特に官邸周辺からの)情報発信を制御することが一番穏当な着地になるだろう。

※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2026年1日26日時点の分析です

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中