CLARITY法案で今後の暗号資産・ビットコイン相場はどうなる?(写真:©Kobe Li/Nexpher via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)
(松嶋 真倫:マネックス証券 暗号資産アナリスト)
米国で進む暗号資産規制の本丸が、「Digital Asset Market Clarity Act(CLARITY法案)」である。本法案は、暗号資産分野で長年曖昧だった規制当局の管轄や市場ルールを明確化し、制度的不確実性を解消することを目的としている。一方、その審議過程では、銀行を中心とする伝統金融と暗号資産業界との利害対立が次第に表面化してきた。
特に、ステーブルコインの利回り提供や規制権限の配分をめぐっては、両者の主張が鋭く食い違っている。規制の明確化は市場の健全化につながるのか、それともイノベーションを阻害するのか。本稿ではCLARITY法案の背景と論点を整理した上で、対立の構造と今後のビットコイン市場への影響を考察する。
米国における暗号資産規制の最大の課題
米国における暗号資産規制の最大の課題は、長年にわたり「誰が、何を、どの法律で監督するのか」が明確でなかった点にある。
証券取引委員会(SEC)は多くの暗号資産を証券とみなし、証券法に基づく執行を進めてきた。一方、商品先物取引委員会(CFTC)はビットコインなどを商品と位置付け、限定的な監督にとどまってきた。その結果、市場参加者は両当局による事後的な摘発を通じて規制を知らされる、いわゆる「エンフォースメントによる規制」という不安定な環境に置かれてきた。
この状況を是正するために提出されたのが、Digital Asset Market Clarity Act、通称CLARITY法案である。同法案は、暗号資産を「証券性を有するデジタル資産」「デジタル商品」「ステーブルコイン」に分類し、それぞれに対応する規制枠組みを整理する構成となっている。
SECとCFTCの管轄境界を議会立法によって定めることで、企業や投資家が事前にルールを把握できる環境を整える狙いがある。
同法案では、ビットコインのように分散的に運用され、発行主体や収益分配を前提としない暗号資産は「デジタル商品」として位置付けられ、主にCFTCの監督対象となる。一方、発行体の事業活動や収益期待と密接に結び付いたトークンは証券としてSECの管轄下に置かれる。
この整理は、SECによる包括的な証券認定に歯止めをかける意味合いを持つと同時に、市場に一定の予見可能性を与えるものでもある。
こうした基本設計を踏まえ、2025年以降、個別の要件について審議が重ねられているが、利害関係者の意見が交錯し、法案成立には至っていない。その過程で複数の修正が加えられてきたが、とりわけ注目を集めているのがステーブルコインの取り扱いである。
既に成立した「GENIUS法」との整合性や銀行業界からの問題提起を受け、「単なる保有に対する利息やリワードの付与」を制限する修正が盛り込まれた。
GENIUS法に署名するトランプ米大統領(写真:©Andrew Leyden/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)
この修正は、金融システムの安定性を重視する伝統金融と、新たな競争や技術革新の余地を確保したい暗号資産業界との利害が正面から衝突する象徴的な論点となっている。次章では、この対立がなぜ生じているのか、背景にある構造や他の論点も含めて整理していく。