2024年に米SECが承認したビットコインETF(写真:ロイター/アフロ)
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(松嶋 真倫:マネックス証券 暗号資産アナリスト)

 2025年10月以降、過去最高値を更新した直後に急落したビットコイン相場は、依然として調整局面を脱しきれていない。こうした停滞感の中、相場の下支え要因のひとつとして注目されているのが、暗号資産ETF(上場投資信託)の拡大である。米国ではビットコインとイーサリアムに続き、他の暗号資産を対象としたETFの承認が本格化しており、日本でも解禁に向けた制度議論が金融庁を中心に進められている。本稿では、ビットコインETFがもたらした市場への影響を整理したうえで、米国におけるアルトコインETFの進展と、日本市場への影響を展望する。

ビットコインETFで暗号資産市場に流れ込んだ機関マネー

 2024年に米証券取引委員会(SEC)が初めて現物型のビットコインETFを正式に承認したことは、暗号資産市場の構造を大きく転換させる象徴的な出来事となった。

 ETFを通じて、投資家はビットコインを現物で保有することなく、価格変動の恩恵を享受できる。この仕組みによって、ウォレット管理や専用口座の開設といった煩雑さが不要となり、個人・機関投資家の双方から高い関心を集めた結果、大規模な資金流入と価格上昇を引き起こした。

 なかでも、世界最大の資産運用会社であるブラックロックが手がける「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)」は、運用開始から1年余りで運用資産残高が15兆円(約1000億ドル)規模に到達し、ETF史上最速の成長を記録した。実際、IBITの手数料収入は、同社の代表的なS&P500連動型ETFを上回る水準に達しており、ETFビジネスにおける新たな柱となりつつある。

 さらに、情報サイト「BitcoinTreasuries」によれば、ビットコインETF全体での保有枚数は150万BTC(時価総額では20兆円規模)を超えており、これは市場で流通するビットコインの供給量の約7%に相当する。つまり、数年間でこれだけの規模の伝統的金融マネーが暗号資産市場に流入していることになり、今後も機関投資家の参入が続く限り、この傾向はさらに強まると見られる。

 実際、ETFを通じた資金流入は、ビットコインの需給に大きな影響を及ぼしている。1日に新たに発行されるビットコインは約450BTC(約70億円)に限られている一方で、IBITをはじめとする主要ETFには日次でそれを大きく上回る数百億円規模の資金が流入する日もあり、新規発行量の倍以上の需要がETF経由で継続的に発生している。

 このような構図は、ETFが単なる投資商品にとどまらず、暗号資産と従来の金融市場を結ぶ中核的な存在として、価格形成や流動性に深く関与するようになったことを示している。