該当演説する自民党の高市早苗首相(写真:つのだよしお/アフロ)
(小泉秀人:一橋大学イノベーション研究センター専任講師)
「どの党の公約も似たり寄ったりだ」――。
海外メディアはそう報じた。実際、消費税率の引き下げや社会保障費の引き下げなど、今回の選挙ではどこに投票しても「バラマキ」をすることになると感じた人は多いだろう。
なぜ、こんなことが起きているのか。
単純に考えれば、高市政権の作戦とも言える。政策を野党に近づければ、選挙は「どの政治家が好きか」という人気投票になる。そうなれば、人気の高い高市首相を擁する自民党が有利だ。
しかし、維新も含め、ほぼ全ての党が似た政策を掲げているのは奇妙ではないか。細かな違いはあっても、ここまで似通い、主要な党が全てバラマキの横並びなのは不思議である。
本稿では、ノーベル経済学賞受賞者の研究をもとに、この疑問を解き明かしたい。そして、ポピュリスト的な「国民ウケするバラマキ政策」に各党が走る土壌を作った張本人が、実は一番得をしているという皮肉な構図を明らかにする。
バラマキの土壌① 政治不信
まず、各党がバラマキ政策に走りがちな今の政治状況を確認しよう。
自民党の裏金問題以来、国民の政治不信は高まってきた。「政治家は難しい言葉でごまかす」「悪いことをして税金を無駄遣いしている」「ちゃんと説明しない」。こうした不満が積み重なっている。
この不信感が、後で説明するように、各党を「国民ウケする政策」へと走らせる原動力になっている。
バラマキの土壌② 物価高
今回の選挙の最大の争点は物価高対策だ。その主な原因は円安である。
そして、この円安を引き起こしたのも自民党なのである。
現在の円安の主な原因は、日本とアメリカの金利差、そして膨大な国の借金だ。日銀がなかなか金利を上げられない背景の1つには、金利を上げればアベノミクス時代に買い込んだ大量の国債のせいで付利が増え、日銀の収益悪化リスクがあるからだろう。海外の投資家からは「奇妙なほどに遅い」と言われるほどの対応の鈍さは、このツケが原因である。
つまり、今の物価高も自民党が招いた結果なのだ。
物価高への不満は、「今すぐ助けてほしい」という切実な声となり、各党はそれに応えようと競い合う。これが、バラマキ的な政策が乱立するもう一つの土壌である。