政治不信が「ポピュリズム」を生む仕組み
では、なぜ政治不信と物価高という土壌があると、各党の政策は似通ってくるのか。経済学の理論で説明しよう。
政治不信が高まると、有権者は政策の中身より先に、政治家の「タイプ」を見極めようとする。ここで言う「タイプ」とは、簡単に言えば「国民を裏切る人か、裏切らない人か」である。
しかし、有権者には政治家の本性は分からない。経済学ではこれを「代理人問題」と呼ぶ。国民は、自分たちの代わりに政治を行う政治家を、完全には監視できない。日々の生活で忙しい私たちが、複雑な政策をいちいちチェックするのは難しい。
そこで有権者は、手間のかかる監視をせずに、「なんとなく信頼できそうか」という直感で判断するようになる。
ノーベル経済学賞を受賞したアセモグルらの研究(2013年)は、この先の展開を理論的に説明している。
有権者が「政治家は一部のエリートに取り込まれているかもしれない」と疑い始めると、政治家にとって大事なのは、政策の中身ではなくなる。「私は国民の味方です」という姿勢を見せることが最優先になる。
すると、政治家は本音がどうであれ、わざと「エリートが嫌がる政策」を打ち出す。それが「私は庶民の味方です」という証明になるからだ。
つまり、政治不信が強まるほど、「私は国民の側です」アピール合戦が激しくなり、政策が大衆迎合型のポピュリスト政策に似通っていくのである。