ロシアのメドベージェフ氏(1月29日撮影、写真:代表撮影/AP/アフロ)
メドベージェフの殊勝な発言
米国とロシアの間で2010年に締結された「新戦略兵器削減条約(新START)」が置き換わる条約がないまま2月5日に失効した。
新STARTは、大陸間射程圏内に配備された米国とロシアの核兵器に数量上限(または中心的制限:central limits)を課す軍備管理協定である。
失効を前に、ロシアのドミトリー・メドベージェフ前大統領(現・安全保障会議副議長)は、本条約が失効した場合、最大の核保有国による核兵器保有に制限がかからない事態を世界は警戒すべきだと指摘した。2月2日付のロイターが伝えた。
その際、メドベージェフ氏は、新STARTは核弾頭数の制限だけでなく、主要核保有国間の意図を検証し、一定の信頼を確保する手段としても極めて重要な役割を果たしていると述べた。
同氏は、2022年のロシアのウクライナ侵攻開始以降、以下の通り、一貫して核兵器の使用を示唆または警告し、緊張を高める発言を繰り返してきたことで特に有名である。
●ロシアの存続がかかった状況や、実効支配するクリミア半島を攻撃された場合など、必要とあればロシアは当然核兵器を使用する。
●ウクライナの反転攻勢によりロシアの領土が奪われた場合、核兵器を使わなければならない。
●北大西洋条約機構(NATO)の支援がウクライナを勝たせることになれば「核戦争」の可能性を高める。
●ウクライナへの戦術核使用は「脅しではない」。ウクライナへの武器供与が続けば、西側諸国に直接的な核攻撃を行う可能性がある。
これらの発言は、ウラジーミル・プーチン大統領の盟友あるいはイエスマンとして、ウクライナや米国・NATOの動きを封じるための心理戦としての核恫喝の一部との見方が有力である。
その彼の口から、これまで一貫して核の使用を煽ってきた姿勢を翻し、いま核軍備管理の重要性という殊勝な言葉が飛び出すに至ったのはなぜであろうか。