米国が考えていること

核大国ロシア・中国との戦略的安定性の確保

 米国議会に設置されている「米国戦略態勢に関する議会委員会(戦略態勢委員会、SPC)」の報告書(2023年)は、ロシアと中国という二大核保有国に直面するという新たな「二国間核戦力」「二核対等(two-nuclear-peer)」環境の出現を警告している。

 その上で、現在の核戦略態勢はそれに対応できておらず、ロシアと同時に、中国の核兵器の増強を確実に抑止できる米国の取組みの重要性を指摘している。

 つまり、米国では、従来のロシアとの「二国間」から、中国を加えた「三国間」の軍備管理へ拡大発展させる必要性と実現可能性をめぐる議論が続けられている。

 ロシアは、2023年に条約の検証体制を一方的に停止した。また、プーチン大統領の「条約失効後1年間延長」提案には検証が含まれていない。

 これらを踏まえ、ロシアとのいかなる合意においても検証の必要性が指摘されている。

 また、ロシアが条約署名後に開発した空中発射弾道ミサイル「キンジャール」や新型中距離弾道ミサイル「オレシュニク」といった新たな核戦力は、「中心的制限」に含めるべきであることや、ロシアが「核兵器を宇宙軌道上に配置」する準備をしている可能性への懸念が指摘されている。

 他方、中国の核戦力は拡大し多様化している。

 新生核三位一体、つまり、中国の核兵器は陸上、海上、空中のプラットフォームから発射できる能力を備えており、米国防省の「中国軍事力報告書」によれば、2024年には運用可能な核弾頭の備蓄量は600個を超え、2030年までには1000個を超えると見積られている。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2025年版報告書でも、最も急速に核兵器を増やしているのは中国で、2023年以降、毎年約100発の弾頭を追加している。

 2020年代末までにロシアや米国と少なくとも同数の大陸間弾道ミサイルを保有する可能性があると指摘している。

 米国では、ロシアとの中心的制限を1年間延長することで、米国の核戦力強化のための措置が妨げられるとか、中国の核兵器の増強を確実に抑止しようとする米国の取り組みが妨げられるなどの議論がある。

 いずれにしても、米国は、ロシアとの核軍備管理にとどまっていたこれまでの政策を改め、「二国間」あるいは「三国間」になるかは不明であるが、中国を加えた同体制の構築を迫られているのは間違いないところである。

 それが、トランプ大統領の「失効したら失効する」発言の真意であろう。