造船所から出航し、まもなく米海軍に引き渡される最新型のバージニア級潜水艦「PCUアイダホ」(米海軍のサイトより)
中国軍、新型のDF-27対艦ミサイルを配備
米国防省が12月23日に公表した「中国の軍事および安全保障動向に関する年次報告書」によると、中国軍のミサイル部隊が米国西海岸にまで到達可能な新型の対艦弾道ミサイル(ASBM)「DF-27」を運用していることが明らかになった。
同報告書によると、DF-27は5000~8000キロ離れた陸上および海上の標的を攻撃できるといい、その攻撃能力が初めて公表された。
その攻撃能力を示したのが下記の要図であり、インド太平洋地域全体と米国西海岸の大部分をカバーする様子が描かれている。
中国軍のASBMは、これまで「空母キラー」の「 DF-21D」と「グアムキラー」の「DF-26」対艦弾道ミサイルの配備に代表的され注目を集めてきた。そのほかにも、巡航ミサイルや超音速ミサイル、極超音速ミサイルの存在が指摘されている。
今年の中国の軍事パレードでは、多数の空中発射型および海上発射型の対艦システムも披露された。
それらにDF-27が加わったことは、従来の第1列島線と第2列島線を睨んだ「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」能力をはるかに超越し、太平洋のほぼ全域からインド洋に至るまで、敵対国の外洋海軍戦力を抑止・撃破する能力を高めたことを意味する。
いわば「インド太平洋キラー」の出現である。
中国軍のA2/AD能力は、より多様化し、より高度化・広域化したと受け止められ、インド太平洋がウクライナ戦争における「黒海」に縮小されたと言っても過言ではない。
ミサイルが有効射程を伸ばし精密度を上げ、センサー類の感度が向上して艦艇に隠れる場所がなくなってきた。
もはや海洋は広大な戦場ではなく、空母などの水上艦艇は「砂漠の中の戦車」のように、ASBMにとっては大きな目標にすぎず、強力な脅威に曝されることになりそうだ。
