閣議で並んで座るトランプ大統領とヘグセス国防長官(12月2日、写真:AP/アフロ)

西半球と中国を優先

目次

トランプ大統領の「国家安全保障戦略」

 筆者がJBpressにおいて、「従来と大きく変わった米国の『国家安全保障戦略』と中国の反日キャンペーンを読み解く-米国・西半球とインド太平洋を重視、欧州・中東を軽視した新NSS―」(2025.12.12付)のテーマで述べたように、ドナルド・トランプ大統領が12月5日に公表した国家安全保障戦略(NSS)は、米国・西半球とインド太平洋における中国を優先するものであった。

 これは、従来の米国の世界における安全保障政策の地域的優先順位を転換・再設定するもので、これまでのNSSとの大きな違い・変化である。

 第1次トランプ政権(2017年)とバイデン政権(2022年)の戦略は、それぞれ中国およびロシアとの大国間競争を重視してきた。

 これに対し、第2次トランプ政権の2025年NSSは、「モンロー主義を再確認し、強化することで西半球における米国の優位性を回復する」ことによる米国本土防衛およびインド太平洋地域における中国との経済的・軍事的競争に重点を置くとしている。

 米国本土防衛には、地域における大量移民、麻薬密売、外国からの侵略への対策、そして「ゴールデン・ドーム・フォー・アメリカ」ミサイル防衛システムによる複雑な空中脅威からの防衛が含まれている。 

 中国については、これまで「誤った」政策が30年間続いたために「中国を豊かで強大な国にしてしまった」と指摘した上で、中国を念頭に商取引を太平洋地域における「究極の利害」と表現している。

 そして、中国の軍備増強よりも貿易不均衡の方が米国の繁栄にとって大きな脅威だとし、同盟国と連携して経済関係の「再均衡」を図ることが新たな米国の戦略だと強調した。

 2017年および2022年のNSSと比較すると、2025年のNSSでは、ロシアとの競争、欧州の安全保障に対するロシアの潜在的な脅威、中東およびアフリカにおける中国およびロシアとの競争が重視されず、いわば相対的に軽視された形だ。

 2025NSSは、軍に対し、「西半球における緊急の脅威に対処するため、世界的な軍事プレゼンスを再調整する」「理想的には中国に対する軍事力の優位性を維持することにより、台湾をめぐる紛争を抑止する」「欧州が自らの防衛の主たる責任を負うことを可能にする」ことを求めている。

 この転換・再設定は、世界各国の安全保障政策に重大な影響を及ぼすのは言うまでもない。

 また、これを受けて策定される米国の国家防衛戦略(NDS)、同計画、作戦、部隊配置、装備、そして軍事施設・拠点などの変更に繋がるのは必定である。

 そのNDSは、まだ策定されていない模様だ。

 では、今後ピート・ヘグセス国防長官が策定する「国家防衛戦略(NDS)」はどのようになるのであろうか?