新START参加を停止したプーチン

 米国とロシアは、2010年に締結された新戦略兵器削減条約(新START)に基づき、両国の戦略核戦力の上限を、①配備済みの戦略核弾頭1550発、②配備済みの大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機の合計700基(機)、③配備済みおよび非配備の戦略運搬手段・発射台の合計800基(機)と定めている。

 本条約は、もともと当時のバラク・オバマ米大統領とくだんのメドベージェフ大統領が署名したもので、皮肉としか言いようがない。

 その後、米国とロシアは2021年、条約を2026年2月まで延長した。

 しかし、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、モスクワは新STARTで義務付けられている現地査察の実施や開催、協議への参加を拒否した。

 そして、2023年2月、プーチン大統領は、英国とフランスの核兵器への懸念や、ウクライナ戦争におけるロシアの「戦略的敗北」を目指す西側諸国の試みなどを理由に挙げ、ロシアが新STARTへの参加を「停止」すると発表した。

 ロシアは条約上の制限を遵守する一方で、同条約に基づくデータ交換を停止すると述べたのだ。

 米国務省(DOS)は、ロシアによる参加停止は「法的に無効」であると主張し、対抗措置を発表した。

 ウクライナ戦争が4年目に入った2025年9月、プーチン大統領は、条約失効後1年間は条約の「中心的制限」を維持する用意があると述べた。

 同氏はまた、ロシアの提案は「米国が同様の精神で行動し、既存の抑止力のバランスを損なったり混乱させたりするような措置を控える場合にのみ実現可能」だと付け加えた。

 プーチン大統領が当初の「新STARTへの参加停止」から「条約失効後1年間延長」に傾いたのは、ドナルド・トランプ大統領のロシア寄りの姿勢を確保・維持しウクライナ戦争を有利に終結させたい思惑がまず挙げられよう。

 加えて、米国との軍拡競争の再来によって、軍事費の重圧・経済の行き詰まりに伴い東西冷戦に敗北した二の舞いを演じたくないなどの計算が働いたのではないかとみられる。

 それを後押ししようとしたのが、冒頭で紹介したメドベージェフ前大統領の発言とみて間違いなかろう。

 これに対し、トランプ米大統領は当初、プーチン大統領の提案に関心を示したと報じられていたが、ロシア当局は米国が正式な回答を出していないと述べている。

 そして、今年1月8日、トランプ大統領はこの条約について「失効したら失効する」と述べたと報じられている。プーチン大統領の提案を跳ねのけた形だ。