張又侠・中央軍事委員会副主席(2025年3月資料写真、写真:AP/アフロ)

中国軍中枢の連続粛清が示す「構造的危機」

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 2026年1月、中国国防省は張又侠・中央軍事委員会副主席と劉振立・統合参謀部長の調査開始を公表した。

 いずれも人民解放軍の制服組トップであり、とりわけ張又侠氏は習近平国家主席の最側近に位置づけられる紅二代の象徴的存在である。

 2023年から2026年にかけて、ロケット軍・装備部・海軍・武警へと広がった粛清ラッシュに、ついに軍の最高幹部まで巻き込まれ、指揮系統そのものが揺らぐ事態となった。

 第2次世界大戦直前、ヨシフ・スターリンがトハチェフスキー事件を含む大規模粛清でソ連軍の戦力を著しく低下させた例を想起させるように、中国軍上層部の連続粛清も、戦力と統制に深刻なダメージを与えるのは避けられない。

 海外メディアが「軍トップ構造の崩壊」と評したのは誇張ではない。

「銃口から生まれた」とされる中国共産党政権にとって、軍は統治の根幹である。その軍を大規模に粛清せざるを得ない状況は、習近平体制の弱体化を示す明確なシグナルといえる。

 すなわち、これは中国の権力構造が内部から崩れ始めた兆候である。
以下、この構造的危機を生み出した政治派閥の力学について述べたい。

劉振立・統合参謀部長(2025年3月資料写真、写真:ロイター/アフロ)

習近平体制を支える4派閥の力学とその崩落

 中国政治は、以下の4派閥の力学で動いてきた。

紅二代

 革命元老の血統、すなわち習仲勲・張宗遜・劉少奇といった建国功労者の家系に連なる層を指す。

 習近平氏の本来の基盤であり、軍・党の「正統性」を象徴する存在で、同じ幹部子弟である太子党よりも格上の「最上位エリート層」として扱われてきた。

太子党

 高級幹部子弟の広いネットワーク、例えば、江沢民・元国家主席の息子・江綿恒氏、温家宝・元総理の息子・温雲松氏、薄一波・元副総理の子である薄熙来氏など、改革開放期以降に権力を握った指導者層の家系に連なる層を指す。

 経済利権・国有企業・金融界に強い影響力を持つ。

団派(共青団)

 共産主義青年団出身の政治エリート、例えば胡錦濤元国家主席・李克強元総理・汪洋元副総理など、共青団でキャリアを積み上げた官僚層を指す。

 庶民派・官僚派の色彩が強く、かつては党内最大派閥だったが、習近平氏によって大幅に弱体化した。

上海閥

 江沢民元国家主席を中心とする上海市政・上海経済圏を基盤とした勢力、例えば曽慶紅氏・呉邦国氏・韓正氏など、上海での実務経験や人脈を共有する層を指す。

 国有企業・金融・外資との結びつきが強く、長年にわたり党内で大きな影響力を持ってきた。

 習近平氏は10年以上かけて団派・上海閥・太子党を弱体化させてきたが、今回の張又侠失脚は、最後に残った「自らの基盤」である紅二代が崩れ始めたことを意味する。

 これら4派閥が同時に弱体化・崩落する事態は、習近平体制の安定性を支えてきた基盤そのものが失われることを意味し、体制にとって最大級の構造的危機となる。