(英エコノミスト誌 2026年2月21日号)
米ラスベガスで開かれた技術見本市(CES)で、ボクサーの格好をしたヒト型ロボットを披露した中国のユニツリー・ロボティクス(1月7日、写真:VCG/アフロ)
ロボット・ダンサーの市場規模は、残念ながら限られている。
「春節聯歓晩会(春晩)」は中国の文化的な豊かさと技術力の両方が披露されるショーケースだ。
国営放送局が旧正月の前夜に4時間にわたって北京から放送するこの番組には、ひざを曲げずに大股で、歌を歌いながら行進する兵士が登場することが多い。
2月16日に放送された今年の春晩の目玉は、刀を振りかざすヒューマノイド(ヒト型ロボット)の一団による演武だった。これを含めて4つあったヒューマノイドの出し物には世界中の視聴者が驚いた。
ヒト型ロボット産業で圧倒的なリード
中国のヒト型ロボット産業が活気づいている。業界各社の発表と調査会社オムディアの推計によれば、昨年納入されたヒューマノイドの台数は世界全体で1万4500台に上り、2024年の約3000台から急増した。
ほとんどが中国製で、中国大手2社の上海智元新創技術(アジボット)と宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)だけでおよそ4分の3を占めている(図1参照)。
図1
これに対し、イーロン・マスク氏の米テスラが生産する「オプティマス」の出荷台数は150台にとどまった。
おまけに、中国は世界で最も懐の深いヒューマノイド向けサプライチェーンの本拠地でもある。
そのため、ヒューマノイドは最終的に世界最大級の産業になると考える西側の人々のなかには、懸念を抱く向きもある。
米投資銀行モルガン・スタンレーは、ヒューマノイドの市場規模が2050年までには年7兆5000億ドルを超え、世界全体で計10億台が稼働しているかもしれないと見ている。
しかし、今のところ、後方宙返りができるロボットを採算の取れるビジネスにつなげる道筋は定かでない。
購入されるヒューマノイドのほとんどは春晩に登場したようなタイプであり、もっぱら人に見せるためのものだ。実際に仕事をしているヒト型ロボットはほとんどない。
しばらくは中国の国家が恐らく最大の需要源であり続けるだろう。
地方政府がマシンを購入しなければ、100社以上ある中国のヒューマノイド製造業者を、こうした業者をますます頼りにしているサプライヤー数万社とともに存続させることは困難だ。
新しい技術が生まれた時、その市場が大方立ち上がるのを待たずに中国が多額の資金をばらまくケースは今回が初めてではない。
だが、ヒューマノイドの技術でそれをやってしまうと、壮大なムダ遣いに終わる恐れがある。

