スイスで開かれた世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席したイーロン・マスク氏(1月22日、写真:ロイター/アフロ)
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(英エコノミスト誌 2026年2月7日号)

スペースXとxAI、テスラの命運がますます絡み合うようになっている。

 イーロン・マスク氏の信奉者は、まだ誰も手がけたことのない分野に進出する同氏のビジョンとそれを可能にする財力――いざとなったら助けてくれるという意味で「イーロン・バックストップ」と称されることがあるもの――の両方を確信している。

 そのマスク氏がロケットの生産と衛星ブロードバンドの販売を手がける米スペースXと人工知能(AI)の研究に携わる米xAI(エックスエーアイ)を統合させる構想を明らかにした2月2日の発表は野心に事欠かなかった。

 世界一の富豪は、新会社は「意識の光を夜空の星にまで伸ばす」と大見得を切った。しかし、地上では、マスク氏がどのように帳尻を合わせるのか見通しにくくなりつつある。

xAIとスペースXを統合する大型M&A

 今回の取引では、新会社の価値を1兆2500億ドルと評価している。

 スペースXの株主が新会社の持ち分の80%を取得し、残りはxAIの所有者が手に入れる(マスク氏は両社の支配的な株式を持つ)。

 経営統合の理由については、多数の人工衛星で構成されるデータセンターを宇宙空間に打ち上げるために両社が協力することだとしている。

 そうすればxAIは最新モデルの開発競争で大いに有利になる一方、スペースXは新しい事業に乗り出せるというわけだ。

 短期的には、今年の夏にも見込まれる株式公開への関心もこの2社の統合によってさらに高まる可能性がある。

 しかし、両社を統合することにより、マスク氏は他社の後塵を拝している金食い虫のAI企業をドル箱の宇宙開発最大手に背負わせることになる。

 マスク氏はそれと同時に、自動車製造の米テスラを自動運転タクシーとヒト型ロボットに特化した「フィジカルAI企業」に再編しようとしている。

 直近のAIの波が、一部で予想されているように世の中のあり方を変えるほどのものであるなら、一連の大胆なギャンブルはうまくいくのかもしれない。

 そうでない場合、マスク氏のビジネス帝国は危機に瀕する恐れがある。